女であったゆえに踏みつけられた名誉と尊厳

c0166264_11294468.jpg11月30日、秋田地裁における三井マリ子VS松浦大悟裁判の最後の報告会と懇親会がありました。

私が最も伝えたいことは、和解というと一般には引き分けと受けとられがちですが、今回の和解は決してそうではない、と2人の弁護士(近江直人弁護士、森田祐子弁護士)が強調したことです。

司会の大倉由紀子さんは、三井さんは2万3665票をとって「これからも頑張ります」と言っていたのに、「さよなら」も言わないで秋田を去ってしまった、と当時のことを紹介していました。

実際、三井さんは、供託金没収ラインを上回る票を獲得しました。しかし、その供託金は、党が供託すべきだったにもかかわらず、私財である個人通帳から引き出され、選挙後、国から返還されたにも関わらず、裁判をするまで三井さんには返還されませんでした。

さらに、候補者本人が何度要求しても「選挙運動収支報告」を知らされず、候補者の知らない通帳(隠し口座)が開設され、民主党本部が振り込んだとする金額と候補者に知らされた金額に差があり、会議を開いてほしいと候補者が要求しても開かれず、「今後、連絡するな」などと言われたのです。

c0166264_115704.jpg裁判をしなかったら、こうした事実が、誰にも知られることなく、何事もなかったこととされて、次の選挙を迎え、また次の選挙へと引き継がれていったことでしょう(右「訴状」をクリックすると読める)。

しかし、三井さんの提訴により、法廷の場で審議され、白日の下にさらされました。それらは、思慮或る人々によって受け止められ、日本の選挙や政治の一角が可視化できたことは、この裁判の大いなる意義であった、と思います。

また、東京都江東区議の中村まさこさんが、「この事件の背景には女性蔑視があると私は指摘したい。女性のほうが候補者探しのとき言いくるめやすく、用が済んだら簡単にお払い箱にしやすい、と被告側は思ったに違いない」と書いています(「秋田政党交付金裁判――背景には女性蔑視がある」2015.10.4)。私も、女性蔑視の要素を多分に含んだ事件であった、と思います。

政党支部の支部長(=衆院候補者)に就任していただいた人が、2期にわたる東京都議会議員を経、女性センターの館長を3年以上務め、高校や大学で教鞭をとり、10冊以上の本を出版してきた、60代の男性であると、想像してみてください。

ダークスーツにネクタイで身を固めた男性に、投票日の5日後に、アポなし、ノックなしに、大勢で、夜襲とも言える訪問ができるでしょうか。

懇願して秋田移住をしていただいた豊富な経験を有する先輩男性を相手に、上記のような言動をとれば、いくらなんでも世間は許さない、と誰もが思うでしょう。三井マリ子さんが女性だったことが、この事件の背景にはある、と私も思います。

思い起こすと、候補者三井マリ子さんの依頼で秋田までやってきて手弁当で政治活動をしていた私に、候補者に断りもなく「帰んなさい!」と言い放った地元の「現職参議院議員公設秘書」の態度は、どれだけ私を驚かせたことか。

私は、屈辱を胸に秋田を去りました。三井さんが秋田を去る1か月前のことでした。私は候補者三井さんの友人であって、現職の参議院議員であれ、その秘書であれ、直接に「帰れ」と言われる筋合いはありません。それが通常の人間関係の筋というもの。それが、候補者を蚊帳の外において「帰れ」指示を出すという「主客転倒」がまかり通ることを、この時、初めて私は知ることとなりました。

裁判所に出された証拠書類や準備書面から、選挙中も選挙後もこの「主客転倒」のままであった、と私は感じました。「主」が、もしも男性だったら、ここまでの転倒はなかったのではないでしょうか。

この総選挙の直後、民主党本部は、衆院選で落選した候補者に半年間、月々50万円の手当を出して総支部を継続させる方針を決めました。その重要な情報を三井さんに伏せて、「落選したら支部は解散し、支部長は解任」「ここ(自宅兼事務所)は12月いっぱいで」と、三井さんに選挙区を出ていくよう迫った事実がありました。

繰り返しになりますが、豊富な社会経験を積んだスーツ姿の男性が相手だったら、同じことができただろうか、と思います。

c0166264_13371240.jpg「和解調書」に戻ります(右「和解調書」をクリックすると読める)。被告松浦大悟さん側は、選挙後のこうした言動を「適切でなかった」と認め、「お詫びの意」を表したことが和解調書に盛り込まれているので、原告三井さんは和解を受け入れたということです。

一方、原告三井さんは、「被告松浦大悟さん側は、政党交付金を自分の選挙用に残す目的で、立候補要請を行った」と主張してきましたが、それを裏付けるに足る的確な証拠がないことを認めて、「遺憾の意」を表す、という和解内容になっています。

さらに、この和解調書には、「異例とも言える」3ページにも渡る「前文」が付され、裁判官の考えが述べられています。その中で、裁判官は、「『政党交付金は選挙には使えない』との誤った説明を原告にしていたことなどを踏まえると、原告において、被告松浦が自らの選挙運動費用を確保するために立候補させたのではないか、との疑念を抱いたとしても、このこと自体は特に理解できないものではない」と、三井さんの主張に理解を示しています。

三井さんは報告会に参加した皆さんに向かって、裁判を総括して、「ノックアウトできると思っていたのですが……かろうじて判定勝ちと言えるのではないか」と述べたところ、会場は拍手で応えていました。私も「判定勝ち」だと受け取ります。

とくに、民主党秋田第3総支部(代表三井マリ子)に降りた政党交付金の残金440万円を、政党助成法の本旨にのっとり、「国庫返納」したことは、松浦大悟さんらの政治資金に流用される可能性を未然に防いだことにつながり、すごいことだと思います。

以上、供託金300万円の三井さんへの返還と、政党交付金の残金440万円の国庫返納。そして、一連の疑念への事実認定とも言える裁判所の理解と、被告松浦大悟さんの「お詫びの意」により、原告三井マリ子さんの踏みつけられた名誉と尊厳は、一定の回復を見たものと、私は思います。
 
最後に、「お詫びの意」を表した被告松浦大悟さんは、今後の政治活動において、同じ轍は踏まない選択をされるものと大いに期待するものです。今後は、秋田県民の方々がその言動を見届けて下さるものと信じます。

c0166264_11411672.jpg「三井候補秋田追放事件を究明する裁判」を支援する事務局を担った者から、秋田の皆さまと、秋田以外の地から応援していただいた全国の皆さまに、心から「ありがとうございました」と申し上げます。

岡田 ふさ子 (さみどりの会* 事務局)


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(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に出た。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴した。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。「産むならば 世界を産めよ ものの芽の 燃え立つ森の さみどりのなか」という阿木津英の歌がある。女性は子どもだけでなく、世界を産み出すのだという意味だ。三井さんは、選挙演説に引用しては「私は新しい秋田を産み出したいのです」と結んでいた。選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイトさみどりの会ホームページには裁判情報が掲載されている。なお、同裁判は2015年11月和解で終わった
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by bekokuma321 | 2015-12-19 12:21 | 秋田