和解調書と裁判長の真意

11月30日、三井マリ子さんの裁判の報告会と懇親会がありました。

参加者の多くは、裁判について新聞で読んだ程度の情報だったようで、裏話を混ぜた詳しい内容に、身を乗り出して聞いていました。

c0166264_12424440.jpg選挙の時から裁判まで三井さんを支えてきた、名古屋の岡田ふさ子さん、三井さんの代理人の近江直人弁護士、森田祐子弁護士、原告の三井マリ子さんが、話をしました。

岡田さんは、「三井さんが秋田を追い出されるより前に、私は松浦さんの秘書に追い出されました」と告白しました。岡田さんは、支部長である候補者三井さんの意向を無視して、その友人に出て行くようにと命令した人たちに驚かされた、と言いました。

c0166264_12331122.jpg近江弁護士は、三井さんが初めて相談に来たときのことから話をしました。「何で松浦大悟参議院議員や事務所の人たちがこんなことをしたのかわからない」とやってきたそうです。近江弁護士も三井さんも、政党交付金など政治資金の知識がなく、裁判のなかで学んでいったと話されました。

刑法違反容疑については、2013年夏、松浦さんの参議員選挙前に警察署に告発をしたが、「選挙妨害」と言われないよう、捜査は松浦さんの選挙後になったことも初めて聞きました。

民事裁判を起こしたのは、1年ほどたってからです。裁判が始まってすぐ、裁判長から「供託金300万円は三井さんに返したらどうか」と松浦さんに提案があったそうです。三井さんの供託金は民主党が出すべきものです。ところが、松浦事務所は、三井さんの個人口座から出していました。

三井さんがもしも10%以上とれなかったら、供託金(三井さん個人資産から供託された)は没収されました。ところが、三井さんは10%以上の票をとりましたので、供託金は没収されずに国から返されました。しかしながら、松浦事務所は受け取ったまま、三井さんには返金しなかったのです。

裁判長提案を受け、松浦さん側は300万円を三井さんに返金してきました。

近江弁護士の話を聞きながら、裁判をしなかったら、供託金300万円は永久に戻ってこなかっただろうと、私は思いました。

c0166264_12354197.jpg森田弁護士は、「和解調書」を読み合わせながら解説をしました。まず、異例の長さの前文がついていること、そのなかで裁判長が指摘している点について解説しました。

(1)松浦さんらによる口座の管理や収支の状況等が決して分かりやすいものではない
(2)選挙後速やかに三井さんに返還されるべき供託金が提訴後にやっと返還された
(3)三井さんは政党交付金受入口口座の開設を認識していなかった
(4)松浦さんらから三井に、受入口口座の開設及び用途についての説明があったとはいえない
(5)三井さんが、選挙や第3総支部に係る資金の管理方法等を理解した上で立候補を受諾したとはいえない
(6)松浦さん(秘書)が作成した選挙運動費用収支報告書には事実と異なる記載がなされており偽造領収証が添付されていた
(7)松浦さんら(秘書2名)が三井さんに対し、「政党交付金は選挙運動に使えない」と言った

続いて森田弁護士は、和解条項の直前にある文章を読みながら、次のような説明をしました。

「『原告と被告らは、下記の和解条項第1項及び第2項について、遺憾の意とお詫びの意を有することを当裁判所において確認した』という部分ですが、双方がお詫びしたように読めますけれども、原告側は、『原告の三井さんが遺憾の意を示し,被告の松浦さんらがお詫びの意を示した』と理解しています」

つまり、お詫びの意を表したのは松浦大悟さんであり、遺憾の意を表したのは三井さんだということです。

さらに森田弁護士は、次の部分を読み上げました。

「選挙直後の被告らを含む民主党秋田県連関係者の不適切な対応により人間としての尊厳を踏みにじられたと原告が主張していることについても,原告が被告松浦の強い要請に基づき立候補を決断したという経緯に照らすと,理解できないものではない。」

森田弁護士は、「ここの『不適切な対応』には,前後の文脈から,三井さんを横手から出て行かせたことを含みます」と解説しました。

そのうえで、「これまで非を認めなかった松浦さんらが、不適切であったことを認め、和解条項の確認の際に、松浦さんがお詫びの意を表明した、そのことは,今回の裁判の成果であったと考えています」と、森田弁護士は強調しました。

c0166264_1247263.jpg最後に三井さんの話がありました。

三井さんは、2012年12月21日、夕方、三井さんが一人で自宅兼事務所にいたとき、松浦大悟参議院議員ら5人が、約束なしに、呼び鈴も鳴らさずはいりこんできたときから始めました。その日まで、「さあ、これからだ。秋田でがんばるぞ」と思っていたそうです。

1人でいるときに、突然、5人でやってきただけでも恐怖そのものでしょう。その「恐怖のつるしあげ」(陳述書)は、2時間近くにわたったそうです。そのだいたいの中身は、「あなたの人格が悪いから人が寄り付かない」「あなたもあなたの友人(ボランティア)も選挙違反をしている。家宅捜査がはいる」「票が減るから、今後はいっさい連絡するな」「ここは12月いっぱいだ」だったそうです。

不本意にも秋田を去った三井さんは、「選挙収支報告を見せてほしい」と手紙を書きますが、無視されてしまいます。不審が募った三井さんは、自分で、秋田まで来て調査しはじめます。そうしていろいろ奇妙なことを発見していきます。

三井さんは、「銀行と松浦事務所との癒着」「政党交付金の問題」の2つをあげました。

まず、三井さんは、三井さんに知らせずに銀行口座(政党交付金受け入れ口口座)を開設した松浦さんの秘書を「有印私文書偽造・同行使・詐欺罪」で告発しました。担当した警部補は、最初やる気まんまんだったそうです。しかし、その後、三井さんが委任状を書いていなかったにも関わらず、「銀行は委任状を見せられて、それを返還したと言ってます」と言い、さらに「銀行は詐欺罪で秘書を訴えないようです」と言ったそうです。

ここで、三井さんは「委任状は見て返すようなものではありませんよね」と会場に言いました。みなうなずいていたようでした。結果として、刑事告発は嫌疑不十分で不起訴とされてしまいました。

「政党交付金の問題」は、怒り心頭です。あきれたのは、松浦さんの秘書たちが、三井さんには「政党交付金は選挙に使えない」などと間違ったことを言いながら、政党交付金をできるだけ使わずに残して、政党交付金の残金を繰り越そうとしたことです。

三井さんは、「今なら、政党交付金は私を当選させるための資金です、それに使えないなら、何に使うんですか、と言えるのですが、その時は政党交付金に無知だったため反論できませんでした」と言いました。

私は、2012年夏ごろ、三井さんが民主党関係者からの勧誘を断っていた場に偶然居合わせました。その後、三井さんは翻意をして、立候補し選挙を闘います。そして選挙後まもなく、「秋田を出ていかなければならなくなった」と言いました。黙って引っ越しを手伝った私は、本当に悲しかったです。

c0166264_13371240.jpgでも、「和解調書」に書かれた言葉を読んで、三井さんの苦しかったこれまでが少しは報われたかなと思います。下にかかげます。

【被告松浦から要請されたとはいえ、原告は、女性議員の増加という使命感のもと「当選の見通しがない」なかで立候補を決意したものであり、女性議員の増加は一朝一夕に実現するものでないにしても、原告の立候補はその一里塚となった。 】

【本件訴訟は損害賠償金の支払を求める形式になっているものの、原告の主な目的は政党交付金の使い方について問題提起をすることにあり、本件訴訟を通じて、その実態を国民が垣間見るところとなったから、上記の目的は少なからず達成されている。】

大倉 由紀子 (さみどりの会*)

(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に出た。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴した。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。「産むならば 世界を産めよ ものの芽の 燃え立つ森の さみどりのなか」という阿木津英の歌がある。女性は子どもだけでなく、世界を産み出すのだという意味だ。三井さんは、選挙演説に引用しては「私は新しい秋田を産み出したいのです」と結んでいた。選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイトさみどりの会ホームページには裁判関係の情報が掲載されている。
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【写真:下を除いて岡橋時子撮影。下は三井マリ子原告と松浦大悟被告に成立した「和解調書」。ネット用に個人情報が黒塗りされている。クリックするとpdf文書を読める】

三井裁判「終わりよければすべてよし」
三井裁判にかかわって
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by bekokuma321 | 2015-12-11 13:46 | 秋田