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ヒジャブ着用をめぐる論争

ヒジャブ着用をめぐる論争_c0166264_239177.jpg「ミニスカ―トやハイヒールを小学生が身につけて通学することは許されないと同じように、小学生がヒジャブを身につけることを禁止すべきです。」

こう公言するのは、ノルウェー労働党のハディア・タジク元文化相だ。彼女は、オスロ選出の国会議員で、労働党副党首という要職にある。パキスタン系ノルウェー人の彼女が、文化相となったのは弱冠29歳のとき。初のイスラム系アジア人の入閣でもあった(注)。

そんなノルウェーの輝ける星ハディア・タジクの発言は、波紋を呼んでいる。

彼女の理屈は、ヒジャブ着用の目的は女性の性を隠すことであり、すなわち女性を性の対象としてみなすことであり、それは許されない、というもの。

しかし、彼女の提言は、オスロの小学校の校長たちには支持されていないようだ。

報道によると、校長の1人は、「私は、小学生がヒジャブを着用すべきではないとは思います。でも禁止する事ではない」と語る。その小学校は移民が多く、8割に上るのだという。しかし、ヒジャブを着用する女子は1%に満たないとも。彼女は、「対話によって、どうすべきかを解決すべき問題で、禁止することではない」と。

また別の小学校の校長は、「ヒジャブの着用については、子どもと親が話し合って決めることだと思います」。この校長の学校も60%が移民の子どもだという。

ヒジャブは、移民問題や女性問題をはらみ感情的になることがある。臆せずに話題提供をした、ハディア・タジク元文化相もなかなかだが、それに即座に反論する校長たちも見事だ。

ハディア・タジクはイスラム文化を背負う移民の女性国会議員、対する校長たち(みな女性)は移民の子の多い小学校のトップ。ヒジャブ問題を議論する上で、これ以上ない組み合わせではないか。

ヒジャブを、社会の片隅で扱う小さな問題ではなく、重大な社会的テーマとしてとりあげて、対話の政治をつくりあげているメディアの姿勢にも好感が持てる。

「個人的問題は政治問題である(Personal is Political)」ーーこれは、1970年代のフェミニストたちのスローガンだった。今でも、ちっとも色あせない。

Oslo-rektorer skeptiske til hijab-forbud
Principals in Oslo Are Against Hijab Ban
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ベルゲンは市長も副市長も女性
ノルウェー:市長と議会に女性を増やす秘策
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
世界一民主的な国
連立の3政党党首全て女性
ヒジャブとオンブッド

【写真:ハディア・タジクのFacebookより】

注:ハディア・タジクは、2008年、翌2009年国会議員選挙のオスロ選挙区労働リストの6番目候補に推薦された。2009年9月の選挙で、オスロの労働党は当選者6人だった。その結果、6番目の彼女は初陣を飾った。26歳だった。2013年再選。両親は1970年代にパキスタンからやってきた移民。専門はジャーナリズムと法律。英国留学経験もある。夫は保守党の国会議員。移民家庭の20代の女性が国会議員になれるのは、彼女の能力もさることながら、供託金もなく候補者に1円も負担がかかららないうえ、政党中心の比例代表制選挙だからであろう。
by bekokuma321 | 2015-12-09 23:14 | ノルウェー