秋田政党交付金裁判――背景には女性蔑視がある

三井マリ子さんが政党交付金の裁判を起こされるまで、政党交付金について深い関心を持ったことがなかった。私が無所属の地方議員ということもあったかもしれない。

このたび三井さんの「陳述書2」(2015年6月21日)を読んで、金に絡め取られている政治家の醜さと、そして平気で女性を利用し踏みにじる人たちへの怒りが深いところから湧き上がっている。

三井さんは「長年、女性議員を増やす運動をしてきました。日本社会において軽んじられてきたおびただしい数の女たちの問題を解決するには、政治の場に女性が出ていかなくては・・・こういう思いで、女性候補者発掘に精を出してきました。」(2015年1月16日 三井マリ子「陳述書」)

女性が力を発揮し、すべての人が暮らしやすい社会の実現に向けて、常に全力で活動を続けてきた三井さんの姿は、地方議会に身を置く私たち女性議員に活を入れてくれた。全国フェミニスト議員連盟での運動や、数々の執筆活動を通じて、多くの人が知っている。

c0166264_11542457.jpg今年の4月に統一地方選挙をくぐり抜けた身としては、三井さんの選挙ポスターや選挙公報や公選ハガキに、「選挙区生まれ」であることや「都議会議員2期」という経歴など最も重要な情報が記載されなかったのは、驚きだった。

少しでも当選可能性を高めようとする選対のやることではない。有権者に対して不誠実であり、有権者の判断に必要な情報を奪うものである。

また落選後、三井さんはきちんと選挙事務に対しても政党支部代表として対応しようとしたが、被告側は三井さんに情報を秘匿し、三井さんが要求しても会議を開こうとせず、選挙収支や政党交付金の使途を知らせなかったという。

この事実だけからしても、当初から三井さんを秋田3区から衆院にというつもりはなく、形だけの衆院候補として政党交付金の受け皿にしようという悪意に満ちたやり方だった、と私には思える。

三井さんが身を削って起こしたこの裁判によって、政党交付金の闇が具体的に明らかになってきた。

朝日新聞でも「検証 政党交付金20年」という連載を始めた。1人250円を出しあった血税を政治家はこんな風に自分のポケットに入れているのかと腹立たしい限りである。

政治とカネの問題だけでない。この事件の背景には女性蔑視があると私は指摘したい。

女性のほうが候補者探しのとき言いくるめやすく、用が済んだら簡単にお払い箱にしやすい、と被告側は思ったに違いない。

昨年の東京都議会でのセクハラ野次、最近では菅官房長官の「子どもを産んで、国に貢献してもらいたい」発言を見ても、政治の世界では女性差別を女性差別と認識できない議員たちが大きな顔をしている。世界では通用しない人たちだ。

三井さんへの攻撃は私たちへの攻撃でもある。ともに傷つき、ともに抵抗していきたい。この裁判は社会に対して重要な一石を投じることになるだろう。

中村 まさ子(東京都江東区議会議員)

(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に出た。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴した。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。「産むならば 世界を産めよ ものの芽の 燃え立つ森の さみどりのなか」という阿木津英の歌がある。女性は子どもだけでなく、世界を産み出すのだという意味だ。三井さんは、選挙演説に引用しては「私は新しい秋田を産み出したいのです」と結んでいた。選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイトさみどりの会ホームページには裁判関係の情報が掲載されている。
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【写真:2012年12月総選挙での公営掲示板に張られた三井候補のポスター。選対は、公費の半額分しかポスターを作成せず、選挙区の生まれであることや東京都議であることなどを省いていた】
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by bekokuma321 | 2015-10-04 12:03 | 秋田