熊野以素「九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実」

c0166264_1253237.png「軍の命令か、医の倫理の逸脱か」

終戦直前、九州帝国大学医学部で行なわれたおぞましい「人体実験」。米軍捕虜8人が殺された。当時、同大医学部助教授であった鳥巣太郎は、この生体実験手術に抵抗した数少ない学者だったという。

世は太平洋戦争の真っ最中。軍の命令に背くことが、いかに困難で苦しみに満ちたものだったか。私はただ想像するしかない。

著者の大阪府豊中市の熊野以素(いそ)さんは、鳥巣太郎のめいにあたるという。

彼女は、長年、この事件の調査を続けてきた。膨大な戦犯裁判記録や、再審査資料を読みこみ、そして、真相を明らかにする本を執筆し、出版にこぎつけた。『九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実』(岩波書店)だ。

70年目にして、ほかならぬ姪の力で、真実が明らかになって、草葉の陰で鳥巣太郎はさぞ喜んでいることだろう。

熊野さんとは、豊中市で仕事をしていた2000年ごろ知り合った。私がバックラッシュ攻撃に抗して裁判で闘った際、彼女は、陳述書を書いて大阪高裁裁判長に提出してくれた。自らの女性差別体験を縦軸に、日本の働く女性への偏見を横軸にして、不当な首切りをバッサリと切った、実に読み応えのある内容だった。ありがたかった。

熊野さんは豊中市議会議員でもある。彼女のような洞察力と正義感に満ちた女性を議員に選んだ豊中市民に拍手したい。

陳述書(2007年11月27日 熊野以素)
熊野いそホームページ


【追記】筆者の熊野以素さんから 「普通の人が倫理を踏み越えさせられる、戦争のもつ恐ろしさ、多くのかたに読んでいただきたいと思っています」
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by bekokuma321 | 2015-06-04 12:58 | その他