北欧からの風を吹かせて日本の議会を変えよう

今回の参院選の投票率は52%。自民圧勝。女性議員もさほど増えなかった。そんな選挙が1週間前に終わった7月27日。三井マリ子さんの講演会が岡谷市であった。東京に行くついでに、立ち寄った。

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演題は、「北欧からの風:三井マリ子さんのノルウェー取材より」。とくに女性の政治参画についてだった。まず、スクリーンいっぱいに広がる、“黒の議会″という写真から始まった(上)。

今から約130年前のノルウェー・オーモット市の市会議員が一堂に会した白黒写真だった。女性議員は1人しかいない。

続く2枚目は、現在のオーモット市議会(下)。ちょうど男女半々だ。130年という時間経過は、同じ市議会をどう変えたか。三井さんは、「長野県中川村は、10議席中女性は1人だそうですね」と、ノルウェー130年前と同じである長野の様子も混ぜながら・・・会場の参加者に問いかけて、答えを引出しつつ、その変化をこうまとめた

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男性ばかりの議会が、男女半々となった。そして、真っ黒な背広にネクタイという制服のような服装が、色とりどり、ポロシャツあり、ブラウスあり、Gパンあり、となった。かしこまった容貌から、くつろいだ格好となった。

男女半々の議会は、ノルウェーの一地方議会だが、この変化は、決して特別な地域の特別な自治体の特別な例ではないそうだ。

次に、世界の女性議員増員運動ポスターの紹介にはいった。三井さんが足で歩いて集めたものだという。

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1枚目はノルウェーのポスター(上)。1960年代から起こった女性を議会に増やそうという運動の1枚だ。スローガンはズバリ「女性に投票せよ!」。投票箱の上で北欧の妖精が「女性候補に入れなさいよ」と見張っている。手書きの素朴な絵から、当時のノルウェー女性の心意気が伝わってくるようだ。

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デンマークのポスターは、「ヨーロッパの風景を綺麗にしよう」(上)。男性が軍隊のように整列する写真と、ラフな格好の男女が肩を組んで笑っている写真の2枚が並ぶ。なんとここに書かれたデンマーク語の「綺麗に」は「平等に」と同じ単語だという。つまり、このポスターは、「ヨーロッパの風景を平等にしよう」を叫んでいるのだ。

ベルギ―のポスターは、「政治の風景を変えてみよう!」。そのスローガンの横には、首から下は背広姿の男性、顔の部分だけが女性の写真に変えられた1人が立っている。言語がわからなくても、言わんとすることは一目瞭然だ。

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次はフランス。「政治は、男性の問題ではない―自分の地域で運動しよう」 (上)。こんな刺激的なスローガンが書かれたポスターから、こちらを見つめている女性は、魅力的なパリジェンヌ。

「こんなポスターが、選挙の前に町に貼られ、社会全体で女性議員を増やそうと頑張ってきたのです」と三井さんは強調する。こういうポスターが貼られていたら、選挙もちょっと楽しくなる。

そして、話はクオータ制へと続く。物事を決める場には一方の性が4割から6割いなければならないという制度だ。ノルウェーで始まったこの制度が国連やEUなど各国に見習われるようになった。

こうした世界各国の女性の政治参画運動を概観したあと、ノルウェーを20年以上取材してきた三井さんによる「ではなぜ平等の社会をつくることができたのか」に移った。

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最初に、三井さんが視察したケアを必要とする人たちのセンターで撮影した1枚が登場した(上)。場所は、特別養護老人ホームのサロンみたいなところ。三井さんを案内した市長が壁際に立ち、高齢の利用者二人を囲んで、ナースかヘルパーか4,5人くつろいでテレビ観賞をしている。休憩中のようだ。

「このサロンではなく自室にいる多くの利用者をケアする職員がほかに十分いるということです」と三井さん。「市長が来ているのに、職員はとくに立ちあがりもせず、脚を組んで笑ったり…リラックスしたままの態度です。市長も後でニコニコ。これが、ノルウェーの平等を表す象徴的1枚です」と力を込めた。

社会民主主義の国、ノルウェーの福祉社会・政策の原則を示す文字がスクリーンに大きく映る。

「貧困は社会の問題である。個人の失敗ではない」「個人や社会が貧困に陥らないようにするのは、国の責務である」「貧困は根絶できる」――短くて、分かりやすくて、力強い。こんな素晴らしい理念をノルウェーは何年も闘って作ってきたのだ。

地方議員はほぼ全員ボランティアであること、選挙制度は国も地方も完全比例代表制であること、政党がつくる候補者名簿(リスト)には男女交互に名が並ぶこと、などなど。三井さんの近著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店) を読んでいた私だが、あらためて感動した。

さらにスクール・エレクションと呼ばれる中・高での「模擬選挙」。なんと生徒会が、本物の政治家たちを学校の体育館によんで、生徒たちと選挙討論会をするのだという。

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女性ロックバンドのメンバーである女子高校生は、サッカーに予算がついてロックバンドに予算がつかないことをどう思うかと各党代表に堂々と質問している。その写真(上)には、会場からため息がもれた。

この1枚だけではなく、全体に、あまりの日本の選挙制度との違いにショックを受けたという参加者が多かった。

質問タイムでは、①投票率を上げるためにはどういう対策をとっているか ②ボランティア議員はなぜ務まるのか ③日本の議員は調査をしたりするのに大変経費がかかり、ボランティアではできないのでは、などがあがった。

投票率に関しては、ノルウェーに限らず北欧では、投票率が8割を切ると「民主主義の危機」という認識があり、対策をとるための委員会が設けられる、という答えだった。地方議員が無報酬であることは、北欧だけでなく多くの国に例があり、日中は公務員や会社員など普通の仕事についていて、夜に議会が開かれる、のだという。「政治をタブー視して、公務員の政治活動を禁止している日本のほうがおかしい」と三井さん。

名古屋から参加した私は、河村たかし名古屋市長が議員報酬半減を掲げて市長に当選したこと、彼は、集会で“ヨーロッパの議員はボランティアである”と発言したこと。矢祭り町の議員報酬日給制など日本の例を紹介した。

三井さんの講演が終了し、講演内容が詳しく書かれている『ノルウェーを変えた髭のノラ:男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)は、即完売。7冊しか持参しなかったことが悔やまれる、と三井さん。

末筆になったが、三井さんの講演会を主催した長野県婦人教育推進協議会に、心から感謝したい。

岡田ふさ子筆(写真は全て三井マリ子)

◆9月にむけて、選挙運動始まる ノルウェー
http://frihet.exblog.jp/20421022/
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by bekokuma321 | 2013-07-28 14:19 | ノルウェー