標的は憲法9,24条: 『バックラッシュの生贄』を読んで

c0166264_1739115.jpg『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』は、豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」館長であった三井マリ子さんの雇い止め裁判の記録である。

三井さんは2000年に全国公募に応じて初代館長(非常勤)に採用されたが、彼女の活躍が気に入らない勢力の圧力を受け、センターの体制強化のために常勤館長とするというシナリオのもと不当解雇された。

豊中市と男女共同参画推進財団を相手に訴訟を起こしたが一審では敗訴。しかし、大阪高裁で勝訴し、2011年に最高裁が市と財団の上告を棄却し高裁判決が確定した。

本書のタイトルは、豊中市が男女共同参画推進条例制定をバックラッシュ勢力(反動・揺り戻し)の市議会議員に認めてもらうことと引き換えに、館長を生贄として解雇したことに依っている。

バックラッシュ勢力の攻撃や行政への圧力を三井さん自身がまとめたドキュメンタリー、共に闘った2人の弁護士の論説、高裁に提出された浅倉むつ子早稲田大学教授の意見書で構成されており、一気に読めるものとなっている。

1999年に男女共同参画社会基本法が成立し、2000年頃から男女共同参画への攻撃が全国的に吹き荒れた。

徳島県議会でもジェンダーフリーや男女混合名簿に対しての批判が繰り返され、議員の言動に戦々恐々とする県職員の姿を垣間見た私は、その様子を三井裁判の陳述書として大阪高裁に提出した。バックラッシュ勢力による地方自治体の意思決定への陰湿な介入・圧力を断罪した高裁判決に、少しは資することができたかと思っている。

徳島では、2010年4月に「在日特権を許さない市民の会(在特会)」が徳島県教組書記局を襲撃する事件が発生したが、本書には三井さん攻撃の急先鋒であった市議と在特会元関西支部長との関係も、暴かれている。

男女平等を理解できない保守系議員が単に騒いでいるだけでなく、明確に憲法9条、24条を標的にしている勢力がバックラッシュを企て広げていることがよく分かる。


高開 千代子(男女共同参画社会をすすめる会@徳島)

【「週刊新社会」に掲載された書評を、著者の許可を得て転載しました】

館長雇止め・バックラッシュ裁判
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by bekokuma321 | 2012-08-10 17:17 | その他