女性史に輝く裁判闘争記:『バックラッシュの生贄』を読んで

c0166264_131365.jpg『バックラッシュの生贄』 。生贄にされた本人の手で、その地獄のような実態が明らかにされた。21世紀の女性史に燦然と輝く裁判闘争記である。

1999年、男女共同参画社会基本法が制定された。皮肉にも、この法律ができたから事件は起きた。なぜか。女性にとって待望の法律が、男女平等を嫌う政治勢力にとっては、とんでもない悪法だったからだ。

制定以来、行政は男女平等を進めるため、全国各地に条例をつくり、センターもつくった。私には遅々たる歩みに見えたが、バックラッシュ勢力の側は違った。苦虫をつぶしながらこの歩みを見ていた。そして攻撃開始。時は2002年夏ごろ。舞台は、大阪府豊中市女性センター「すてっぷ」。バックラッシュの生贄にされたのは初代館長三井マリ子さんである。

バックラッシュ勢力とは何か。それは、「日本会議」、あるいは「新しい歴史教科書をつくる会」、「在特会」、「教育再生地方議員百人と市民の会」など、さまざまな名前を持つ右派政治組織である。憲法改悪を目標にし、日の丸・君が代の強制、夫婦別姓反対を運動に掲げる。

そのひとつである新生佛教教団は、保守王国山口県山口市にある。本文157ページの注に詳しく書かれている。山口県宇部市の男女共同参画推進条例案が改悪され、無残な条例に変わり果てたのはあまりにも有名である。

バックラッシュ勢力は、女性が、経済的に自立して自分の人生を生きられるような世の中になることが気に入らない。この筋の人たちは、男女平等になるとフリーセックスになり、トイレや更衣室が男女いっしょになるなどとでたらめをいう。家庭や社会が崩壊するなどと叫ぶ。こんな真っ赤な嘘を、自分たちの新聞で、本で、講演会で、チラシで、広める。

行政職員も議員も含め日本人の多くは、男女平等を真剣に考えたことなどない人ばかりだ。そのすきをねらうように、嘘やデマの宣伝がこれでもかと届けられる。こうしてバックラッシュ勢力のデマは一気に日本列島に広まった。行政はビクビクし、男女共同参画政策を進めるどころの話ではない。金も人も使った国家的プロジェクトと言える。そのひとつが豊中市だったのだ。

三井さんは、二度と自分のような生贄を出してはいけないと、地獄からはいあがって、自分の経験を本にした。私たちは、この本のおかげで、初めてバックラッシュ勢力の実態を手にとって読めるようになった。

現在、関西から勢いを全国に広げる大阪維新の会につらなる議員には、バックラッシュ勢力が多い。前述した「教育再生地方議員百人と市民の会」のホームページを見たら、理事長は大阪維新の会の辻淳子議員であるという。本を読んだばかりの私は、この会の前理事長は豊中の北川悟司議員で、事務局長は増木重夫在特会関西支部長で、この会がどういうことをしてきたかを、よくよく知っている。こうした人たちが政治を牛耳るようになったら、さらに生贄は増えるだろう。

ひとりでも多くの人にこの本を読んで、バックラッシュの実態を知ってほしいと願わずにはいられない。

私は幸いにも、第1回の裁判から最後までほぼすべてを傍聴し、約6年あまりを著者である原告と行動をともにした。であるから、この本は、私自身の人生のひと時ともなっている。

勝又みずえ(全国フェミニスト議員連盟会員)
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by bekokuma321 | 2012-06-27 22:49