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EUと北欧の女たちの働き方

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5月26日、東京・亀戸文化センターにて、セミナー「世界の女たちの働き方」が開かれた。

報告者は、EUの男女平等政策について数多くの著書を送りだしている柴山恵美子さん。そしてスウェーデンの労働組合と女性雇用の研究者・榊原裕美子さん。最新情報を報告しながら、時折、2人とも、日本の女性労働のむごすぎる現状に、怒りの表情を浮かべ、ため息がまじった。

スウェーデンの女性労働者の地位は、長い社会民主主義政権と、高い労働組合組織率にある。平等価値を尊ぶ国民性が産み出した「連帯賃金政策」にも、驚愕させられた。

2000年、スウェーデンの労働組合を束ねる全国組織LOのトップに女性が就任した。彼女は、「フェミニストでなければ、組合員ではない」と激を飛ばしたという。 

EUは、加盟27カ国の法律を、EU指令にそって改善させる権限を持つ。国内法がEU水準に達してなければ、EU委員会や国民が、各政府を相手どって、欧州裁判所に訴えることができる。つまり、EU諸国は、自国の法の網にくわえて、EU法で網かけされている。

パートや派遣などのいわゆる正規でない労働であっても、均等待遇(同一価値労働同一賃金)の原則があり、日本のようなひどい格差はない。それに何と言っても、「挙証責任」が、差別を訴えられた企業側にある点が、日本と雲泥の差だ。

部屋中に熱気が充満し、世界の潮流からかけはなれている日本の労働の現状に、怒りがわいた。それに輪をかけたのが、リコー子会社のセクハラ解雇で苦しんでいる長澤由美子(仮)さんの会場発言だった。

しかし、講演の充実した中身に刺激され、会場は、何かしようという雰囲気で満ちあふれた。自分の住む地域の女性雇用の実態を調査し、女性の声なき声を行政に届けようという提案もあった。

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▲榊原裕美さん作成「スウェーデンの連帯賃金政策」

以下は、参加者全員によるアピ―ル。

☆☆ アピール ☆☆

日本では、雇用されて働く女性の半数以上が、パート、派遣、アルバイトなどの非正規雇用者です。女性たちの多くは、明日の保障のない仕事で働いています。これは、日本の未来にとって由々しき事態です。

高校の非常勤講師をする高橋さん(仮名:以下同じ)は、年末になると、通常の教員の仕事をこなしながら、来年度の働き口を捜して、知り合いの学校関係者に片端から頼んで回る日々です。

介護ヘルパーの佐藤さんは、更新を続けて5年目。副主任の肩書きがつきました。ところが同じ仕事に携わる若い正社員は彼女より給与が多く、社会保険にも入っていることを知りショックでした。変だと思いましたが、口に出せば、おそらく更新を打ち切られます。だから泣き寝入りせざるをえませんでした。

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予備校非常勤講師の白石さんは、シングルマザーです。医療、年金、雇用保険を自分で支払わなければなりません。住まい探しで不動産屋に行きましたが、非正規に貸すアパートは極めて少ないことがわかりました。銀行ローンは正社員の勤続年数が基準と言われました。ローンを組むこともできませんでした。

某市で手話通訳の職につく大川さんは、育児休業を申請したら、次の更新はないと宣告されました。10年、20年と更新を続ける先輩が多く、大川さん以外に「契約期間満了です」と雇止めされた人は過去に1人もいませんでした。大川さんは日弁連の人権救済に訴えました。

高橋さん、佐藤さん、白石さん、大川さん、は氷山の一角です。彼女たちのような女性が、日本には実に1218万人もいます。女性雇用者の54%を占めます。男性は19%です。

今日、私たちは、EUと北欧の「男女平等と雇用政策」を聞き、日本で見られる“有期であっても有期でない非正規雇用” (連続的有期雇用契約)など、基本的に存在しないことを学びました。労働は期間の定めのないことが原則で、有期は例外です。有期には、一時的・臨時的でなければならない厳しい制約が必要とされます。日本にはびこる“有期であっても有期でない非正規雇用”は、ほぼ全て正規職なのです。

さらに、EUや北欧には、正規と非正規の労働者の間に「均等待遇原則」(同一価値労働同一賃金)があります。4時間の人は、8時間の人のほぼ半分の賃金、手当、休暇、社会保険などを保障されます。その結果、短時間労働の女性が多くても、日本のような「賃金の男女格差100対37」はありえないばかりか、明日の保障のない「身分」に女性たちが閉じ込められるようなことはないのです。

今国会に上程された「労働契約法を一部改正する法律案」に、以上のことはまったく反映されていません。私たちは、非正規で働く女性たちの声に耳をすまし、その声が同法案に反映されるよう、暮らしの場であり働く場である地方自治体から意見を届けてゆくことを、ここに誓います。


2012年5月26日                  

全国フェミニスト議員連盟・記念セミナー「世界の女たちの働き方」参加者一同
【全国フェミニスト議員連盟は、女性議員を増やすことによって平等と民主主義に満ちた社会をつくろうという目的の、市民と議員による団体。代表矢澤江美子・中村まさ子】

▼参考:「日本の男女賃金格差100対37」
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(棒グラフの出典:「女性の活躍による経済活性化に向けて」平成24年5月22日内閣府特命担当大臣中川正春http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120522/shiryo3.pdf
by bekokuma321 | 2012-05-27 20:54 | ヨーロッパ