ヨーロッパの有期労働

「これから話すヨーロッパの法律を聞いて、ホントなのかと疑う方も多いはずです。真実だと証明するため、英語、フランス語などの原典をここに用意しています(笑)」

4月27日、田端博邦さんは、講演「有期雇用の法制について―EU、フランス、ドイツとの比較で―」を、こう口火を切った。有期雇用についての法制度は、ヨーロッパと日本でまったく共通性がないというのだ。

田端さんは言う。「ヨーロッパも日本も経営者の考えることは同じです。安い労働力を自由に雇いたい、これには限界がないのです」

では何で、これほど制度が違うか。闘いの差だ。闘う主体である労働組合の力の差。そして社会的底辺・弱者の声を政策決定に届ける代表(議員)の数の差だ、と私は考える。

田端さんのレジュメの見出しは「ヨーロッパの法制:有期雇用との闘い」。“闘い"の2字が光る。

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田端さんによると、フランスでは、1982年「労働契約は、期間の定めなしに締結される」と明文化されている。つまり、労働契約とは無期雇用が原則、なのだ。

その後、変遷があり、現行は、「期間の定めのない労働契約は、雇用関係の正常かつ一般的な形態である」だ。原則は変わってない。

現行法における有期についての定めはこうだ:「期間の定めのある労働契約は、その理由がいかなるものであれ、その目的においてであれその結果においてであれ、企業の正常かつ恒常的な活動にむすびついた雇用に持続的に充てることはできない」

ひとことで言うならば、「有期雇用は、特別なのだ、例外的なのだ」と言っている。

したがって、有期は「明確に規定され、かつ一時的な任務についてのみ、また以下の場合においてのみ」とされている。以下とは、①欠勤の代替  ②企業活動の一時的増加 ③季節労働。

フランスの“闘い”の成果の陰に、労働側の力がある。そして、こうした労使の合意による取り決めは、ヨーロッパの有期雇用に関する原則になっている。――田端さんは、強調する。

ヨーロッパには、欧州労連ETUC、欧州産業経営者連盟UNICE、欧州公共企業体センターCEEPがある。各国の労働側組織、経営者側組織が、ヨーロッパ全体で審議決定する合議体を設けているのだ。その3つのヨーロッパ連合体によって、有期雇用の枠組みを労使協定している。

1999年に制定された枠組み協定の目的は2つ。①差別禁止原則によって有期雇用の質を改善すること ②有期雇用の反復による濫用防止すること。 

田端さんは、「原則は、差別禁止、すなわち均等待遇ということです。EUの戦略的柱は、有期であっても労働条件に差をもうけてはならないということなのです」とゆっくりと力を込めた。その柱に加え、「もうひとつの柱が濫用防止規定の3つなのです」。3つとは、「有期を正当化する客観的理由」「全体の期間の上限」「更新回数」。「日本では、後者の3つのみが紹介されているようだ」と田端さんは懸念する。

有期雇用には女性が多い。ヨーロッパも日本も同じだ。しかし、ヨーロッパには、有期と無期に差別禁止規定(均等待遇)原則がある。日本の多くの女性が苦しむ「育休切り」「更新をこれが最後ですという一文を更新の際に入れられる」「何回も更新を続け無期雇用と同じような仕事を低賃金で働かせられる」などということはあってはならないのだ。

そしてEUには、男女の均等待遇に関する数々の法制度がある。この情報は、5月26日「世界の女たちの働き方」で聴けるだろう。

(EUの決める場には、社会の底辺を代弁する議員が相当数いる。上図は、欧州議会における女性議員。今や3分の1が女性。選挙は全加盟国が比例代表制で行う。比例代表制だから、労働者代表、女性代表がかならず当選するしくみになっている)

■ETUC Action Programme on Gender Equality
http://www.etuc.org/a/9833
■COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT:EU Plan of Action on Gender Equality and Women's Empowerment in Development 2010-2015
http://ec.europa.eu/development/icenter/repository/SEC_2010_265_gender_action_plan_EN.pdf
■New partnership between EU and UN Women to enhance gender equality worldwide
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/12/373&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
■「労働行政の現状」全労働省労働組合
http://www.zenrodo.com/teigen_kenkai/img/rodougyouseinogenjou.pdf
■有期労働は21世紀の奴隷制
http://frihet.exblog.jp/17878980/
■脇田滋「意見書」
http://fightback.fem.jp/WAKITA_Shigeru_ikensyo.pdf
■セミナー「世界の女たちの働き方」にどうぞ
http://frihet.exblog.jp/17840363/

☆一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センターの
高須裕彦さんから、貴重な情報です。
■Ustreamにアップしました。以下のURLで視聴できます。
http://www.ustream.tv/channel/labor-now-tv
■配布資料は以下からダウンロードできるようにしました。
http://socialmovementunionism.blogspot.jp/2012/04/eu.html

☆有期雇用の法制をどう考えるか (田端博邦)
http://www.fair-labor.soc.hit-u.ac.jp/SocialMovementUnionism/20120427-2.pdf
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by bekokuma321 | 2012-04-28 14:19 | ヨーロッパ