有期労働は21世紀の奴隷制

4月25日、中央大学駿河台記念館で、西谷敏さん(大阪市立大学)の講演があった。「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」という政府法案の特徴と、その問題点を簡潔に示してくれた。

そもそも、この法案は、有期で働く不安定労働者を救うためにつくられたはずだ。厚生労働省情報には、「有期を無期の正社員に転換すること」が、まっさきにうたわれている。

パートや非常勤が正社員になれるーーー「あ~、これこそ多くの女性たちが望んでいることだ」と思えた。私には改正らしく、見えた。

しかし、どうもぬかよろこびにすぎないことが、西谷さんの解説でわかった。落とし穴があるのだ。

いわゆる、「入口規制」のない点が、最大の問題点だ。「労働契約は、期間の定めのないものが原則だ」--ヨーロッパ諸国にある、これが明文化されていないのだ。

無期が原則だとすると、有期は例外、となる。例外には、季節労働だからとか予算限定のプロジェクトだからとかいうもっともな理由が必要となる。たとえば、スーパーがある限りレジ職員は恒常的に必要な仕事だから、有期であることに合理性はない。

有期から無期への転換という、今回の法改正の“花”にも問題がある。転換という条文はいいのだが、有期の期間が問題だ。

法案の5年では長すぎるのだ。韓国は2年間、イギリスは4年間だ。つい、3年より5年の有期のほうが長くていいと思いがちだ。だが、違う。

上限を1年とし、最大3年(更新3回)とかにして、企業側にとって、使い勝手が悪い有期にしないと、歯止めにならない。もっともだ。従業員が1,2年で次々に辞められては、代わりを見つけるのが厄介となり、有期雇いのメリットがなくなり、企業の野放し有期に規制がかかるからだ。

今回、ドキッとさせられたのは、「空白期間」なる定めだ。前の契約期間と、次の契約期間の間のことをさす。その空白期間が半年以上あるときは、その前の契約がチャラになるという。5年間働いて、6ヵ月空白期間があったら、その前の5年間がなくなるというのだ。わかりにくいが、企業にとって使いやすいための措置に間違いない。

さらに、「更新はこれでもって最後とします」という一行を入れて、「更新しますので、サインをしてください」と言われる職場がある。それを防ぐ条項がない。

これは、従業員にとって踏み絵だ。サインしないと更新されない。サインすると、次回の更新はない。どっちに転んでも地獄は近い。この地獄の恐怖を防ぐためには、それを禁じる条文が必要だ。しかし、それにはまったく触れていない。

「派遣法の政府案――最初のーーとは全く違う。この法案なら、つぶれても決して惜しくない」と、西谷さんはむすんだ。

西谷さんが強調したように、労働法は、労使の力関係で決まる。あまりに弱い、日本の労働組合。企業はこの実態を知っているから、こうした馬鹿にした法案ができるのだ。まさに、非正規は21世紀の奴隷制だ。

だけど、あきらめたらおしまい。世界からの風をなんとか吹かせて、改善していきたい。

■21世紀の奴隷解放運動
http://fightback.fem.jp/genkokukara1.html
■恒常的業務である館長職は有期にはできない
http://fightback.fem.jp/wakita_ikensyo-1.html
■「有期労働契約の在り方について」(建議)について by 全労働省労組http://www.zenrodo.com/teigen_kenkai/t01_roudouhousei/t01_1201_01.html







集会アピール

「この国は非正規問題を解決する気があるんですかね」
 2008年のリーマンショックの影響による非正規労働者の大量の雇い止めが起こった。これを機に立ち上がった元派遣労働者は、労働者派遣法改正案が国会を通過した際、怒りで声を震わせた。「必ず抜本改正を実現します」と約束した与党だったが、改正は製造業務派遣、登録型派遣の原則禁止という縛りをなくし、底抜けの改正に止まった。裏切りに声を震わせた仲間は「それでも、闘わなければならない」と何とか次の言葉を絞り出した。
 今日、この集会に集まった私たちは、彼ら、彼女らの震える声に、応えて行かなければならない。もちろん、共に闘わなければならない。震える声に耳を貸すこともなく採決を強行した人々を、私たちは忘れはしない。
  有期雇用法制についても、私たちは、共に闘ってきた仲間たちの声に耳を澄ます。5年を超えて更新を繰り返した有期労働者は、期間の定めのない雇用に転換するという。ある労働法学者は、無期転換が入ったことを「画期的だ」と評しているという。確かに無期転換が入りはしたが、5年の間に雇い止めにされる不安を持つ労働者が非常に多い。正社員の求人がなくなるのではないかと心配する若年労働者もいる。また、「期間の定めを除く労働条件」は「特段の定めがない限り従前のまま」とされるのだ。
 なぜ、仲間たちは不安なのか。答えは明らかだろう。労働者派遣法においても有期雇用法制においても、「入り口規制」はなされなかったのだ。有期の仕事が臨時的、一時的な仕事だとは明らかにしていない。これからも、有期として使い続ける意志が透けて見えてくるからだ。
 私たちは彼ら、彼女らの声に耳を澄まし、仲間として共に闘い、共に声を上げて行く。今日の集会で学んだことを確信に、より力強い活動を展開しよう。緊迫した国会情勢をふまえ、共同の取り組みをいっそう広げよう。
 安定した雇用、生活できる賃金、モノ扱いさせず人として尊厳のある労働を獲得する。そんなささやかで、当たり前で、けれど、この国の中ではとても獲得することが難しくなっている。私たちは今後も全力でこの問題に取り組んで行こう。物わかり悪く、諦めず、粘り強く歩を進めて行こう。彼ら、彼女らの涙、悔しさ、切なさ、怒り……。それらを無かったことにはしたくない。働く者たちの連帯を信じ、前に進もう。
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by bekokuma321 | 2012-04-26 14:47 | その他