ブレイビク被告とノルウェー人の価値

1986年、ノルウェーのブルントラント首相が、内閣の40%を女性にした。それを報道した新聞記事を自宅で読んだ。日本の内閣は当時男性のみだったから、仰天した。それ以来、北欧の小さな国は、私の憧れとなった。

ノルウェーを何度か訪ねた。自由と平等という両立しがたい価値を両立させている社会に見えた。どんどん好きになった。

男女平等を取材していた私は、政治家、男女平等オンブッド(オンブズマンのこと)、フェミニストたちと親しくなった。友人もできた。誠実で、おおらかで、ユーモアのセンスがある人が多かった。今も家族ぐるみでおつきあいしている友人が何人かいる。

その国が今、苦悩している。4月16日から、オスロ裁判所で、昨夏77人を襲撃した実行犯の公判が始まった。法廷は夏まで10週間続くという。

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[選挙の投票を呼びかけるオスロ市のポスター。多人種であることに注目。いまやオスロ住民の4人に1人が移民出身。市議会労働党議員の過半数は移民出身となった▲]

33歳の極右青年は、証言席で述べた。2日目は1時間15分もかけて文書を読み上げた。

「イスラム化を防ぐために必要だった」
「ノルウェーはいずれ第三世界の子孫に占領されてしまう」
「殺害した行為は認めるが、罪だとは考えていない」
「彼らは無邪気な子どもではなく、ヒトラーのユースHitler Youthのような政党青年部に属している人間だ」
「また同じことをするだろう」
「無実となるか死刑かどちらかであり、ノルウェーの21年間終身刑などふざけている」
「ブルントラント元首相をカメラの前でうち首にする予定だった」

耳をふさぎたくなるような独善的で非科学的で虚偽に満ちた言葉の数々。犠牲者の遺族や友人たちはさぞ苦しかっただろう。

世界中から報道機関がノルウェーに押し寄せて、連日、トップニュースで報道している。その中から英ガーディアン紙の含蓄のある社説を紹介する。

「ノルウェー人やノルウェー人の価値観を共有している人々はナイーブであってはならない。ブレイビクは、彼に追随する者がいてほしいだろう。ビジョンある男だと歴史に残されたいのだろう。どこかに、彼の言い分にほれ込んで、彼に負けじと行動を起こす者がいるかもしれない。しかし、だからといって、彼の言い分は危険だから聞いたり話したりすべきでないとはならない。ブレイビクの害毒に満ちた考えは、聞くに堪えない。しかし本当の害毒は、理性や正義では勝てないという恐れに屈してしまうことだ」

■Breivik trial: Norway's troubled example to the world
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/apr/16/breivik-trial-test?intcmp=239
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by bekokuma321 | 2012-04-19 21:21 | ノルウェー