NRKとNHK--報道における女性

「男の友情、女性警察官を排除」。この大見出しの下に沈んだ表情の女性警察官の写真。ノルウェー国営放送NRK10月25日のトップニュースだ(インターネット)。

その女性は、ノルウェー・トロンハイムの警察署長。「どのように警察幹部が登用されるか」について、めずらしい研究論文を発表した。彼女によれば、男性同士の知り合いの輪から登用されることが多く、その結果、意欲や才能あふれる女性警察官がはじかれるのだという。

NRKは、「警察幹部の30%は女性にという目標にもかかわらず実際20%にすぎない」と、男性同士の友情に警告を発する。

日本は警察幹部どころか、あらゆる管理・決定の場が圧倒的に男性だ。この歪んだ現実がニュースになることは、日本のメディアではほぼありえない。なぜ、こうも違うのか?

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■NRK「ダイバーシティ委員会

先日、オスロのNRKで聞いた話に、回答のヒントがあるようだ(注)。

NRKには「ダイバーシティ委員会」という組織がある。過去の「男女平等委員会」が発展的解消されてできた。ダイバーシティとは多様性という意味で、ここでは社会的弱者の平等推進を表す。人事部トップのヘッゲ・グローバ(写真の最左)は、この委員会のトップを兼ねる。彼女は、まず数字を示した。

「NRKは文化省の管轄にあります。現文化相のアンニケン・ヴィットフェルトは男女平等に熱心です。NRKの最高幹部である理事会役員は6人です。そのうち3人は女性です。役員の半数3人は職員組合から委嘱されますが、うち1人は女性です。3600人の全職員のうち45%が女性です。しかし最高幹部レベル1,2,3に女性は30%しかいません。そのうち編集部門、管理部門の幹部はすでに40%以上が女性です。ニュース部門は52%が女性になりました」

c0166264_176946.jpg「しかし、NRKのトップは理事会が選びますが、ずっと男性で、女性がなったことはありません。近いうち、その日が来ると楽しみにしています。私たちは、女性職員の占める割合が絶対減らないよう、常に注意を払い、監視をしています。私は人事部門のトップですが、常に数字を頭に入れて採用・登用をします。さらに年1回、ダイバーシティに関する『報告書』を作成し、全NRKに注意を促します」

■紛争地域の特派員に女性を
NRKと相等しい日本のNHKを管轄する総務相は男性。NHK理事会は、会長以下12人全員男性だ。女性がいないだけでなく、職員組合代表もいない。男女平等委員会やダイバーシティを推進する特別な委員会もない(2011年10月26日現在)。

NRKで、分刻みのスケジュールの中、時間を割いてくれたのはTVニュース部門トップのソールベイ・トヴェット。

「私はすべてのニュース制作に目を通します。夜7時の44分間のニュースがハイライトです。男女で、が鉄則です。このごろは、経験豊かな女性アンカーと、若い男性アンカーのペアが多くなりました。また特派員にも女性を増やす努力をしています」

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目の前のスクリーンにブラッセル発の報道ニュースが映った。
「これは2011年3月21日のネットTVです。彼女は、リビア軍事情勢を報道している最中です。このように男性が多かった紛争地域の報道も女性が担うようになりました」

■“恐ろしいテロ担当記者”であり“優しいママ”
次に犯罪専門ジャーナリストとしては初の女性、アンネマッテ・モーラン(一番上の写真の右から2人目)が説明に立った。37歳。小さな子どもを保育園に預けて、テロ現場に出向く。

「以前はおもしろくない部門にいました。犯罪部門はとても心が躍ります。犯罪を通して社会が見えてくるのです。非常にエキサイティングです。7月のテロ事件も担当しました。捜査担当官、警察官、法律家・・・まだ男性が多い分野に切り込む仕事です。“恐ろしいテロ担当記者”と“優しいママ”という2役をこなしています」

c0166264_16574413.jpg時々刻々と変わるニュース報道の部屋を見学した。仕事の合間に現れたのは、子育て中のラジオ記者イ―ダ・クリ―ド(右)。

「子どもの保育園は8時半から16時までです。今日、私は18時まで働かなければなりませんので、夫が子どもを迎えに行きます」。

■母親の時代とまったく違う
c0166264_172164.jpg女性ジャーナリストのモデルと仰がれるアネット・グロス(左)が、かけつけた。英国や米国の特派員を歴任したベテラン記者だ。日本女性を励ますかのように、こう語った。

「私の母親の生き方と私の生き方は、まったく異なります。母親の時代は、女性がこんなふうに世界にまたをかけて働くことはできませんでした。女性たちは、60年代、70年代に女性たちが運動をし、変革をしていったのです」

日本の報道界に、女性幹部を増やすには何年もかかるに違いない。女性記者たちの運動があっても、進まないのかもしれない。せめてNHKに、「ダイバーシティ委員会」というような組織をつくれないものだろうか。


●Police Women stopped by camaraderie
http://nrk.no/nyheter/distrikt/nrk_trondelag/1.7847697
●Norwegian Broadcasting Corporation: Statement of Commitments
http://www.regjeringen.no/upload/KKD/NRK-plakaten-engelsk.pdf
●NRKs styre
http://www.nrk.no/informasjon/organisasjonen/1.2897388
●NHK理事http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/yakuin/index.html
■日本の社会に占める女性(日本放協会、日本新聞協会とも女性役員ゼロ)
http://www.gender.go.jp/research/pdf/reference_indicator.pdf

【注】栃木県の女性たちによる企画で行った「ノルウェー女性の生き方を探る旅」(梅澤啓子団長)。企画にはノルウェー王国大使館の協力、NRKダイバーシティ委員会との面談にはNRKトロムス・フィンマルクのベンテ・シェルヴァンから格別なる協力を得た。厚く御礼を申し上げる。
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by bekokuma321 | 2011-10-26 16:35 | ノルウェー