2011年 08月 19日
襲撃犯が嫌悪するフェミニズム
「ヨーロッパ文化のフェミニズム化はほぼ完成しており、男性優位の最後の砦である警察と軍隊が今攻撃されている」(p29)
これは、ノルウェーを震撼させた襲撃犯ブレイヴィック著とされる1500ページのマニフェスト『2083-ヨーロッパ独立宣言』に書かれた言葉だ(The Gurdian, The Chronicle)。
私は読む時間はないため、原典にあたってはいない。しかし彼の本当のターゲットはグロ・ハーレム・ブルントラント元首相だった、と彼は言った。そのことを考えると、なるほど、上の記述を実行したのだ思う。
ブルントラント元首相は、1986年、ノルウェーで初めて内閣の40%を女性にした。当時、「女性の内閣」と世界のマスコミが報道した。
7月22日、ブレイヴィックは、オスロ市内で爆発事件を起こし、その後、ウタヤ島に向かったが、交通渋滞で予定の時刻より遅れてしまったという。ウタヤ島では労働党青年部の夏合宿の真っ最中。その日の昼前、ブルントラント元首相の講演があり、昼食後、彼女は島を離れた。
ノルウェーは、最も男女平等が進んだ国であることは、国連などさまざまな国際調査が証明している。内閣の半分は女性、国会議員や地方議員の約40%は女性だ。上場株式会社の取締役の女性率は世界でダントツのトップだ。そして赤ん坊を持つ男性は、12週間の育児休暇を有給でとれる。起業を始める女性には、経済的優遇措置がある。(『ノルウェーを変えた髭のノラ:男女平等社会はこうしてできた』(明石書店) )
こうしたノルウェー社会は、長年、労働党中心の政権が進めてきた男女平等を願うノルウェー政治の賜物だ。
ブルントラント首相は、その先陣を切った政治家だ。彼女に代表されるフェミニズムによって、最後の砦まで浸食されないため、という妄想を彼は実行に移したのだ。
こうした極右思想の持ち主は日本にもいる。ノルウェーには、彼の考えと同じような移民排斥を掲げ、クオータ制度に反対する政党があり勢力を伸ばしている。日本にも、「夫婦別姓は家族を崩壊させ、社会を混乱に陥れる」などと曲解する政治家や政党がある。オスロの襲撃犯の行動を単に“狂気の沙汰”で片づけることはできない。
(注) politically correct 。差別がないようにすること。しかしここでは日本のバックラッシュ勢力が男女平等を攻撃する時に使う“行き過ぎた~”に近い。言葉狩りとも解釈できる。
■On Breivik and Feminism
http://chronicle.com/blogs/brainstorm/on-breivik-and-feminism/37817
■Norway, the fatherland
http://www.guardian.co.uk/money/2011/jul/19/norway-dads-peternity-leave-chemin
■Anders Breivik's chilling anti-feminism
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/jul/27/breivik-anti-feminism
■テロ容疑者のターゲットはブルントラント元首相か
http://frihet.exblog.jp/16653328/