チーム・ウルフ:女たちの支援

伊藤由子は、被害が甚大だった石巻から車で1時間余の加美町に住む。加美町周辺にたいした被害はなかった。そこで、石巻の避難所に食べ物を届けるボランティアを始めた。発案したのは近所の女ともだち。

最初は、おいなりさんとタオルと水だった。みんなおいしいと笑顔で食べてくれた。その1週間後、近所に「おにぎりを握って届けま~す。9時から12時の間におにぎりを持ってきてくださ~い」と呼びかけた。チラシもつくった。

なんと3800個のおにぎりが集まった。はっと汁(宮城県の郷土料理)450人分と一緒に避難所に届けた。非常に寒い日だったうえ、菓子パンなどの“非常食”しか食べられなかった人たちの喜んだこと! 

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夫たちは、「休みになると家にいない」と顔をしかめていることが多かった。ところが、そんな夫たちを一度連れて行ったら、次には率先して同行するようになった。家でいやいやおにぎりを握っていた高校生も、石巻で被災した人たちを見て態度が変わった。「僕、ぜいたくいえない」と生活を見直すようになった。中には自分一人で石巻に出かけ、泥出しボランティアに加わった高校生もいる。

女性たちが始めた避難所支援は、男たちを巻き込み、家族を変えていった。伊藤たちは、この新グループに「チーム・ウルフ」と名前をつけた。女性たちの住む住所表記に「狼」という漢字があるからだという。伊藤は、「国の役人や議員も現地に足を運んでほしい」と言う。

ノルウェーの探検家でノーベル平和賞受賞者ナンセンは、「隣人愛こそ政治だ」と言っていたという。ノルウェー語で«Nestekjærlighet er realpolitikk». 伊藤こそ、真の政治家だと思う。

伊藤由子は、宮城県加美町議。女性議員がひとりもいなかった加美町に女性議員を、と運動していた。誰も出る人が見つからず自分が立候補。伊藤の当選で、加美町は、「女性ゼロ議会」から「紅一点議会」に変わった。

【写真は、ある日のメニューを書いたのれん】

(敬称略)
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by bekokuma321 | 2011-06-01 18:00 | 紛争・大災害