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IMFトップのセクシャル・ハラスメント

IMFのドミニク・ストロスカーン専務理事は、100万ドル(約1億円)の保釈金を提示したが、保釈を拒否された。彼は、留置施設からライカーズ島刑務所に移送される。

保釈拒否の決定したのは、マンハッタン刑事裁判所裁判長メリッサ・ジャクソン(女性)。彼女は、彼に逃亡の恐れがあると判断した。

法廷の裁判の様子が、動画で世界中に配信されている。白いシャツに黒のコートをはおった無精ひげのストロスカーンも、目の前で見ることができる。私は、今年1月、6年半の裁判を闘い最高裁で勝利した。その過程で、日本の司法はなんて市民感覚と離れていることよと実感した。写真撮影さえ許可されない日本の法廷。それと比較し、アメリカの裁判所ではテレビ撮影まで許されている。その公開度にあらためて驚いた。

さて、世界のメディアは、日本の原発報道を吹き飛ばしIMFトップの性犯罪に移っているが、この事件もまた起こるべくして起きた。

ストロスカーンがIMF専務理事に就任しまもない2008年、ハンガリー人経済学者(女性)に地位を利用して性的嫌がらせを繰り返していたという事件が起きている。http://frihet.exblog.jp/16333215/で紹介したピロスカ・ナギィだ。

ナギィは、このセクシャル・ハラスメント事件に関する公的なコメントはしていない。しかし、調査段階で提出された手紙で、「彼は、女性を雇用する職場を指導するには“不適切”といえる男性です」と述べている。

ナギィは、ウオール・ストリート・ジャーナルに最近報道された手紙で、この事件の主調査人にこう書いている。「長い専門家人生を経てきましたが、私は、IMFトップが言いよってくる事態に対する備えを欠いていました。私はどのように対処していいかわかりませんでした。お話したように、『どちらにころんでも私が非難される』と思われました。」

ロバート・スミス弁護人宛の手紙の文末は、こうだ。実に的確に彼を分析している。
「彼は、彼の命令下で働く女性のいる組織を指導するには、不適切である男性だと、私は懸念します」

ピロスカ・ナギィの言う「どちらにころんでも非難される」とは、女性がしばしば陥る被害だ。ノルウェーの社会心理学者であり政治家ベリット・オースの「支配者が使う5つのテクニック」のひとつだ。オースは、権力を持つ男性が、女性を支配する際、用いる手法を5つに分類し、女性はそれを認識すること、そして連帯してそれを跳ね返す力を持たなければならないとしている。(詳しくは、『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店) 2章 虐げられた時代、「支配者が使う5つの手口」参照)

彼の弁護人は、IMFという国際組織と彼の保身から、彼のセクシャル・ハラスメントを矮小化させることを至上命題とし、それに成功したのだろう。既婚者であったピロスカ・ナギィも、家族のことや将来を考え和解に応じたに違いない。

しかし、この時、セクシャル・ハラスメントが女性の労働権を侵害し、女性の人間としての尊厳を踏みにじる深刻な犯罪であるという判断が下されていたなら?

彼は、3年後、マンハッタンのホテル従業員を監禁・強姦する行為(検察発表)に至らなかったかもしれない。        

http://www.nytimes.com/2011/05/17/world/europe/17fund.html
http://www.nytimes.com/2011/05/17/nyregion/imf-chief-is-held-without-bail.html?ref=europe
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703509104576325703420731800.html?mod=googlenews_wsj
by bekokuma321 | 2011-05-17 22:41 | ヨーロッパ