原発事故から考える民主主義

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「双葉郡はなくなる…」。こうつぶやきながら、私は地図「福島第一原発から30 km²圏内の自治体の動き」を見ている。3月20日の朝日新聞朝刊だ。

ジーッと地図を見つめ、「なんでここの住民は、こんなにたくさん原発をつくることを選んだんだろう」と思う。

東電の福島原子力発電所は双葉郡にある。大熊町、双葉町、富岡町、楢葉町、浪江町、広野町、川内村、葛尾村がある双葉郡に住む7万人余りの人々の土地に建設されたのだ(実際に原発が建っているのは4自治体)。8自治体にはそれぞれに議会がある。住民は一人一人、行政の首長と議会の議員を選挙で選べるのだ。

調べて驚いた。8自治体の首長8人のうち、なんと5首長までが無投票だった。

今、ニュースでハラハラしながら見ている第1原発1号機、2号機、3号機、4号機は、大熊町にある。この大熊町の町長は無投票で選ばれた。町長選には1人、町議選には定数の14人しか立候補しなかったため、町長選挙だけでなく、町議会選挙もなかった。

大熊町が原発誘致を議決したのは1961年だった。しかし、その後、スリーマイル島事故(79年)、チェルノブイリ事故(86年)が勃発した。

1万人余りの大熊町の住民のなかには、2度の原発事故の悲惨さを知り、子どもの健康や暮らしに不安を抱いた人もいたはずだ。すぐ目の前にある原発を見て、震えあがった女性もいただろう。地震や津波が頻繁にある三陸の人たちに、危機感がなかったとは思えない。本来はそういう住民の声を反映するために選挙はある。しかし、である。

無投票は大熊町だけではない。第2原発のある富岡町も同じだ。町長も町議会議員も、無投票だった。驚くべきことだ。

「さいたまスーパーアリーナ」に町ごと避難した双葉町には、第1原発5号機、6号機がある。この町長選には3人が立候補した。だが3人が3人とも、原発の危機対応どころか、さらなる7号機、8号機の増設を掲げての選挙だったという。12人の議員は選挙で選ばれたものの、全員無所属、全員男性である。つまり、女性の代表はゼロなのだ。

原発誘致の最終決定の場は福島県議会だ。ここには、双葉郡から2人の議員を送りだしている。自民党の吉田栄光と、県民連合(民主系)の坂本栄司だ。

吉田の公約は「原発新増設の促進」だ。それを実現させるべく、県議会では原発のさらなる増設にむかって驀進してきた。一方の民主党公認の坂本は、「原発立地町に居住する、現職では唯一の県議」と自称しているものの、原発への危機対応に関する質問はほとんどない。

「日本の原発を受け入れている地域では、民主主義が破壊されてしまっている悲しい状況があります」

これは、妙長寺の住職中嶋さんの言葉だ(英channel4 1995年「隠された被爆労働~日本の原発労働者」)。

破壊された民主主義を修復することは困難かもしれない。しかし、修復の道が残っているとすれば、原発促進は命と引きかえであることを肝に命じることではないだろうか。その一人一人の胸に灯る命の大切さを政治決定に反映させることができるチャンス、それは選挙だ。

そして、思う。民意が平等に反映されない今の小選挙制には大きな欠陥がある。今の選挙制度である限り少数意見は無視され続けるからだ。これを機に比例制度導入への世論が高まらなくては嘘だ。


■YouTube - 英channel4 1995年 隠された被爆労働~日本の原発労働者1
http://www.youtube.com/watch?v=92fP58sMYus
■YouTube - 英channel4 1995年 隠された被爆労働~日本の原発労働者2
http://www.youtube.com/watch?v=pJeiwVtRaQ8&feature=related
■YouTube - 英channel4 1995年 隠された被爆労働~日本の原発労働者3
http://www.youtube.com/watch?v=mgLUTKxItt4&feature=related
[以上は写真家樋口健二の作品を元に英国のチャンネル4が制作したビデオ]
■樋口健二講演録「原子力を撃つ」
http://ihope.jp/shoot.html#マスコミの責任
■『原発をよむ』高木仁三郎・編著
http://blog.goo.ne.jp/ryuzou42/e/be82f38e5609baabe3d6bfa7e1f06d12
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by bekokuma321 | 2011-03-20 21:02 | 紛争・大災害