2011年 03月 05日
別姓訴訟と「流れに逆らう女」
聞いていたオーレ・G・ナルッド市長は、「塚本さんの話は、僕が人前でよく引用する話を思い出させますね」と言った。その話は「流れに逆らう女」。実は私は、拙著『ママは大臣 パパ育児』(明石書店)で紹介している。ノルウェー人の抵抗精神を表していると思ったからだ。
ナルッド市長は、「話自体は、昔からノルウェー人に伝えられてきた、昔話といった類のものです。でも、70年代に一世を風靡した詩人で作家のアンドレ・ビェルケが講演で、彼女を紹介したのです。それが素晴らしかった。僕も、以来、皆の前で話すんですよ」。後で、彼は、アンドレ・ビェルケの講和を探し出してくれた。
塚本協子さん、渡辺二夫さん・加山恵美さん夫妻ほか5人の原告、そして「戸籍と婚外子差別」撤廃にがんばる田中須美子さんたち、さらには自分の信念を曲げずに抵抗する多くの日本の女たちを思いながら…ノルウェーから要約を贈ります。
■ 流れに逆らう女
自由について軽んじられているこのごろ、
われわれノルウェー人が知っておくべき
話があります
ノルウエーに伝えられている、ジャンヌ・ダルクよりも、
聖人といえる女性の自由な魂についてです。
その女性は、生来の頑固ものでした
彼女はあまりに頑固な性格ゆえに、ノルウェー伝承文学
(原典「人民の詩」)に確固たる位置を占めています
彼女を押さえつけることは誰にもできませんでした
彼女に手を焼いた夫は、川に彼女の頭を押さえつけました
彼女は溺れて声が出なくなったのですが
手を水の上にあげて、手で自分の主張をしたのです
2本の指ではさみのかっこうをして
そして、まるで鮭ように、流れに逆らって上流に
流れていきました
上流も上流、滝の上に流れていっていたのです
誰にも真似のできない抵抗です
彼女こそ、ノルウェー人魂を象徴しています
彼女こそ、自らの自由を欲し続けるノルウェー人そのもの
「流れに逆らう女」と知られています
われわれノルウェー人の中に、非常にすぐれた精神というものが
あるとすれば、それは彼女に続いていると、
私は申し上げたいのです
――アンドレ・ビェルケAndré Bjerke (1918–1985)の講和より
(ノルウェーの伝承によると、「流れに逆らう女」はこうだ。昔々、猛烈に頑固な女性がいた。手を焼いていた夫は、彼女を川につれていき溺れさせようとした。頭を水に抑えつけて殺そうしたが、それでも彼女は必死に抵抗。自分の言い分を通そうとした。川に流したものの、後で夫はかわいそうになって妻を探しに行った。ところが下流には彼女は見つからず、上流の、しかも滝の上に彼女が流されていた)
●http://folk.uio.no/thomas/fri/kjerringa-mot-strommen.html
●http://fightback.fem.jp/2011newyeargreeting.html
●http://www.librarything.com/author/bjerkeandr