汚い衣類は家の中で洗え

I PANNI SPORCHI SI LAVANO IN FAMIGLIA

「汚い衣類は家の中で洗え」。イタリアの慣用句で、家の中の恥ずべき行為は外に出すべきではないという意味だ。

この慣用句を知ったのは、東京都北区で開かれた日本縦断トリエステ精神保健講演会だ。イタリアのマリア・グラッツィア・ジャンニケッダ(バザーリア財団理事長)は、11月の来日講演で日本へのメッセ―ジにこの言葉を使った。

70年代、バザーリアやその仲間たちは、精神病院内のすべてを赤裸々に外に放ち、精神病院改革への突破口をつくった。「汚い衣類」を家の外に出して見せたことを、当時、多くの精神科医は非難攻撃した。「汚い衣類は家の中で洗え」と。しかし、とマリア・グラッツィアはこう結んだ。

「このイタリアの慣用句は正しくありません。汚い衣類を家に隠しておいてはならないのです。外に出して、みなで一緒に洗うべきなのです。そうしてはじめて、同じ権利を持つ我々人間誰もが過ごしやすい世界を、作り上げることができるのです」

彼女は、こうして講演を終えた。このフィナーレに、満場の拍手が沸き起こった。

この理屈は、ドメスティック・バイオレンス(DV、家庭内暴力)の防止・根絶に日の光が当たらなかったころ、女性団体が使っていた理屈と同じだな、と思った。

かつて、夫や恋人から暴力を受けてきた女性たちは押し黙って耐えるだけだった。相談したところで、「家の中の喧嘩は犬も食わない」「家の恥を外に出して何になる。(女が)我慢すればいいことだ」と返されるのがオチだった。でも、時代は変わり、泣き寝入りしない女性たちが出てきた。思いきって声をあげた。こうして世界中で、DV問題の深刻さが話し合われた。2001年、日本にもDV防止法ができた。

差別偏見との闘いは、「汚い衣類」を家の外に出すことから始まるのだと思う。「箪笥の骸骨 A skeleton in the closet」という慣用句もある。欧米で広く使われている言葉だ。外に出したらマイナスになると恐れて隠している事柄を指す。バザーリアは、それを外に出そうと呼びかけ、精神病院院長時代に自ら実践した。

日本縦断トリエステ精神保健講演会は、紅葉真っ盛りの京都・真如堂でもミニ・シンポジウムを持った。これは非公開だった。その質疑応答の際、家族会の人が、「学者、ジャーナリストなどインテリは、自分の家族に精神障がい者がいるのにそれを表に出そうとしません。表に出さないのだから、家族会の仲間にも入会してこない」と、言った。怒りがこもっていた。

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by bekokuma321 | 2010-12-06 10:42 | ヨーロッパ