精神病院をなくした国イタリアから@諫早市

「日本縦断トリエステ精神保健講演会」
~マニコミオをやめたイタリアからのメッセージ~

第4 弾は長崎県諫早市。約450人が諫早市民センターに集い、イタリアの闘いと改革に耳を傾けた。午前10時半から午後4時半までの6時間の長丁場だったが、昼休みを除き席を立つ人はほとんどいなかった。準備運営は社会福祉法人南高愛隣会など。

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photo by Mariko Mitsui

講演者はジゼッラ・トリンカス、トッマ―ゾ・ロザーヴィオ、マリアグラッツア・ジャンニケッダのイタリア人3人に、大熊一夫の4人。内容は11月16日の東京11月17日の横浜市とほぼ同じ。印象に残った質疑応答部分に絞って簡単に報告する。





精神病を患った40代の息子を持つ母親が、その苦悩を怒涛のように爆発させた。

「はじめは、誰にも言えずひた隠しに隠していました。のちに精神病院に入れたが、見舞いに行くのは私と娘だけでした。息子の友人、近所の人にも隠していたからです。私は、『自分のせいで精神病院に入院させてしまった』という重責にさいなまれました。

今は、かつて住んでいた佐世保から大村に引っ越してきて住んでいます。なぜなら大村には、精神障がい者が集う場所や一緒に作業したりする場があるからです。イタリア家族会連合のジゼッラさんの話を聞いて、どこからそのエネルギーが出てきて、どう持続できているのだろうと思いました。私も病院内で家族会というものがあると知り、活動をしてきました。家族会は年老いた人ばかりです。今、私は、眼病、うつ病などいくつかの病気をかかえ、自分のほうが参っています。無念です。でも若い人が続かないのです」

c0166264_105668.jpgそれに対してイタリア家族会連合会長のジゼッラはこう語った。

「イタリアにも日本の状況と似た絶望的状況にいる人もいます。地域保健サービスがない地域によくあるのです。でも地域保健サービスがないからこそ、家族会が活動を続けなければなりません。イタリアでは、家族会の会長が、家族会の維持発展を引っ張ってきた。外にサービスをつくるため、ジャーナリストや政治家を精神病院内に来てもらい、それを報道してもらい、実際の姿を知ってもらうことが最も大切です。家族会は、悪い現実を告発することに勢力を使ってきました」

続けて北九州から聞きにきたという臨床心理士(女性)は、熱心にメモをとりながら聞いていたが、挙手をして次のような質問をした。

「イタリアの精神障がいの現状を聞いて、若い人たちがこういうことに関心を持つような刺激を与えることが大切だとわかりました。このテーマに関して教育をしているではないかと思ったが、どうでしょうか」

フランコ・バザーリア財団理事長のマリアグラッツィアは応えた。

「そのとおりです。若い人たちに対するさまざまな教育的プログラムに取り組んできました。教育指導は、私たちだけでなく、患者・当事者とともにやってきました。実は、この11月9日にローマの大学の大きな教室に16歳から18歳の生徒を800人集めて、会議をしました。この大プロジェクトのために1年間準備しました。イタリア各地の学校を当事者と一緒に回って、精神保健とは何か、病気とは何か、一般市民にどういうふうに伝えたら効果的かなどを話し合いつつ、準備を重ねてきました。そのプロジェクト名は『未知との遭遇』。そしてサブタイトルは『エイリアンは怖くない』です。」

マリアグラッツィアが講演の最後に紹介した写真集の復刻版も、こうした教育の一貫といえる。
この写真集『死にゆく階級』(原題Morire di Classe)は、1969年フランコ・バザーリアが精神病院の実態を赤裸々に写真で知らせた告発の書である。ベストセラーとなって、イタリアで精神病院の現実に目を向けることにつながっていった。最近、復刻版が出版された。
http://www.vidbox.org/video/eXt069KzYsM/MORIRE_DI_CLASSE____1968.html

Youtubeにアップされた「精神病院をなくしたイタリアからのメッセージ」講演会
■トリエステ精神保健 / マリアグラツィア・ジャンニケッダさん挨拶(日伊通訳つき)http://www.youtube.com/watch?v=Ai08sOs5fb8


主催:
●日本縦断トリエステ精神保健講演会実行委員会(詳しくはHPを「日本縦断トリエステ精神保健講演会」)委員長:堂本暁子 事務局長:大熊一夫 委員:伊藤順一郎、門屋充郎、大石真弥、大石賢二郎、恒松由記子、久永文恵、田島光浩、三井マリ子、半田卓穂
●フランコ・バザーリア財団


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■イタリア精神病院解体の裏にある女性パワー
http://frihet.exblog.jp/9980032/

■イタリアの“夢のような挑戦”―地域精神保健サービスの国際セミナーhttp://www.news.janjan.jp/living/0810/0810189690/1.php

■イタリアの第1回バザリア(バザーリア)学術賞が『ルポ・精神病棟』の著者、大熊氏にhttp://janjan.voicejapan.org/culture/0806/0806250512/1.php


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http://frihet.exblog.jp/15488229/
http://frihet.exblog.jp/15479537/
http://frihet.exblog.jp/15467986/(写真つき)
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by bekokuma321 | 2010-11-21 22:52 | ヨーロッパ