ヒジャブとオンブッド

イスラム教徒の女性がまとうヒジャブは、一国の警察官の制服にふさわしいか否か。

今、ノルウェーで、警察官僚とイスラム宗派ノルウェー人だけでなく、反差別・平等オンブッド(かつての男女平等オンブッド)や、法務大臣、政治家、市民をまきこんだ大論争になっている。

c0166264_10344818.jpgそもそもは、警察官がヒジャブを取り入れた制服使用を認めないのは、特定の宗教信者にとって雇用機会が排除・制限されることであり差別だという訴えから始まった。それを受けたオンブッドは、「警察官はヒジャブを取り入れた制服を認めるべきだ。認めないのは、平等法違反である」と結論づけた。不服とした警察庁は、平等審判院に提訴。平等審判員もまた、オンブッドと同様に「違法である」という結論だった。

国民を巻き込んだ論争に発展した。たとえば…
「個人生活ではどんな服装を選ぼうと自由を認められるべきだが、制服が決められている警察官にまで、その自由は及ばない」
「我々は多様な文化を持つ社会に住んでいるのだから、警察官もそれを反映すべきだ」
「文化の問題などではなく、信教の自由を保障するという人権の問題である」
「ヒジャブを来た女性の警察官って、とてもカッコイイ」

そして警察官僚の幹部は、「たとえ違法だといわれても、警察官の制服にヒジャブは認められない」と公言した。さらに警察行政のトップ法務大臣クヌート・ストールベルゲも「ヒジャブを制服にすることは禁じる」と宣言。オンブッドの勧告に従わないことを選択したのだ。





c0166264_10353067.jpgオンブッドとは、市民の立場にたって行政などによる人権侵害がないかどうかを調査し、改善を促す国家機関だ。検察官と大臣を足して2で割ったような強い権限を持ち、ノルウェーには、何種類かのオンブッドがいる。反差別・平等オンブッドの原型は、1978年の男女平等法で設定された男女平等オンブッドである。後年、そのカバーする対象がマイノリティや障がい者へも広がることとなった。罰則もなく、勧告を従わせる法的権限もないものの、その高い地位と、マスコミへの公表を通じて、これまでおおむね勧告に従わせる力があった。

しかし、ヒジャブ問題などでオンブッド勧告が無視される中、「オンブッドなど、ジョークだ」とその権限低下に怒り、嘆く人もいる。

このような現状を受け、NRK(ノルウェー国営放送)は、オンブッド創立当時の歴史や、現在のオンブッドをとりまく問題点を国民への取材を通して特集番組を制作。世論喚起に一役かって出た。その中で、現反差別・平等オンブッドのスンニヴァ・ウルスヴィックSunniva Ørstadvikは、NRK
の取材にこう答える。

「クヌート・ストールベルゲ法務大臣が、我々の勧告に従わなかったのは驚きです。我々は白黒つけがたい問題を扱っており、とりわけ男女平等の推進には大きな抵抗勢力もあり、時間がかかります。今日、敗北しても、明日は勝利するつもりです」。

http://nrk.no/nyheter/norge/1.7268347
http://nrk.no/nyheter/distrikt/ostlandssendingen/1.7257097
関連日本語Webhttp://frihet.exblog.jp/10809829/

写真
上:警察官の制服としてヒジャブのデザインをしたデザイナーの絵(NRKより)
下:ノルウェーの男女平等オンブッドについて権限、機能、具体的事例などが詳述されている冊子『男女平等オンブッド』
[PR]
by bekokuma321 | 2010-09-14 10:32 | ノルウェー