未来への提言「世界一囚人の少ない国からの報告」

今晩、8時、おもしろそうなテレビ番組がある。

未来への提言「世界一囚人の少ない国からの報告」(NHK)だ。世界一囚人の少ない国とは、ノルウェーのこと。詳しくは、http://www.norway.or.jp/news_events/2009/NHK+Nils+Christie.htm

それで、思い出したことがある。この夏、ノルウェーに総選挙の取材に行った折、目を丸くして驚いた記事だ。重要な人権問題なので紹介したい。

9月初め、ノルウェーに到着した私は、国際プレスセンターのパソコンで、選挙の特集記事を片っ端から通読した。

NRK(ノルウェー放送協会)の「2009選挙」を見た。NRKで放映された番組のインターネット版だ。両腕に大きな刺青をした男性がまっすぐこちらを見据えて写っていた。8月24日付けだった。

男性はビュルナール・ダール、43歳。辞書を片手にさらに読み進んだ。ビュルナール・ダールは、窃盗罪で、4年9ヶ月の服役中の身だった。盗んだのは、Amphetaminesというドラッグ(いわゆるヒロポン)。30年近くその薬を常用しており、1984年に初めて逮捕されて以来、何度も逮捕されたという。

私が非常に驚いたのは、3人の政治家が、服役中の受刑者ビュルナール・ダールに、直接、意見を聞くというテレビ番組をNRKが企画し、その企画に刑務所側が応じ、出演を承諾した受刑者がいて、刑務所でのテレビ討論が、放映されたということだ。記事によると、視聴者がテレビ番組中に彼に質問をし、彼がそれに答えるという時間もあったらしい。

刑務所の環境や、受刑者の日常生活、社会復帰更正プログラムなど・・・犯罪問題を討論するには、犯罪専門家や政治家だけでなく当事者からの声を聞くことは大事だ。しかし、当事者の声を聞くために、NRKのカメラが、刑務所に乗り込んだということに私はうなってしまった。麻薬常用者で何度も逮捕歴がある受刑者が、真正面からカメラに向かって意見を述べたことにも、驚いた。

ビュルナール・ダールは、お茶の間でテレビを見ている人たちに向けて、こう言う。
「人間を閉じ込めておくことは役に立ちません。座りっぱなしでハンガーのペンキ塗りを続けることも、板に釘打ちをし続けることも役に立ちません。何か、意味のあることをしたいのです。ここにずっとはいません。僕も外に出ます。あなたはどういう隣人を持ちたいかを考えてください。ずっと刑務所の中で社会から閉ざされた環境にいた人か、それとも、普通の社会と変わらない環境で、何か仕事をしたきた人か」

背景には、ノルウェーで“極右”とされている進歩党が、犯罪を減らすには厳罰主義でゆくべきだと提案し、進歩党支持の高まりとともに、「犯罪問題」が選挙の重要な争点となったことがある。9月14日の選挙結果は、既報のとおり、労働党を中心とした中道左派政権の続投となり、進歩党は政権をとれなかった。

私は、市民と政治家の距離が近い国ノルウェーに感銘を受けてきた。今回、私は、市民と受刑者との距離も近いのだな、とあらためて感銘を受けた。

今晩、日本で放送される内容は私にはわからない。でも、「世界一囚人の少ない国」を作り上げたノルウェーの刑務所は、日本とは比較にならないほど開かれている、と想像はできる。


■NRK(ノルウェー放送協会)URL
http://www.nrk.no/nyheter/innenriks/valg/valg_2009/1.6743072
(刑務所でビュルナール・ダール受刑者と、3人の政治家たちが隣に並んで討論している写真や、討論中の録画が見られる)

■囚人に限らず人間の隔離拘束は撤廃していくべきだ。日本では精神に病を抱える人の隔離も大問題。http://okumakazuo.com/index.php
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by bekokuma321 | 2009-10-01 18:56 | ノルウェー