女たちに投票せよ

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「女たちに投票せよ」キャンペーン時のチラシ


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山小屋シエテのベッド横の壁に、黒のフレームをつけて掲げられている


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この土地のシエテ料理が並ぶテーブル


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屋根の上に草花が植えられているシエテ。


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グレーテのシエテに行く道標。後方右奥が、シエテ


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のっそりのっそり牛の群れが何十頭も道路に。なかなか車を走らせられない・・・

ノルウェー女性は、今やその政治進出で世界一、二を争う。しかし、60年代、女性議員はわずか10%だった。現在の日本と同じだ。ノルウェーの女たちは、それでは社会がよくなるはずがないと考えた。そこで議会に女性を増やすために立ち上がった。60年代末から80年代にかけて、国中で、女性を当選させる運動を仕掛け、闘った。

その時代の貴重な証しを、おととい見つけた。ノルウェーの山間部ヘッドマーク県トルガ市にある、グレーテ・ブッティングスルッドという女性の山小屋に掲げられていた(1番上の写真)。「女たちに投票せよStem på kvinner! 」と書いてある。投票日は9月12日だとわかる。怒りのメスマークをもっているのは魔女だ。

グレーテはブディエBudeie(牛飼い、3番目の写真の左の女性)と呼ばれる職業についている。

ここで、ノルウェー語についてちょっと。

ブディエBudeieとは、牛を放牧・飼育しミルクを搾る人を指す。古来から女性にしかできない仕事といわれていた。Budeieというノルウェー語は、“乳搾りの女性”と訳せると思う。ジェンダーの垣根を越えようとしている現在、議論となる表現ではある。山小屋をシエテseterと言い、その牛飼いと家族が住む牛飼い小屋を指す。丸太で作った素朴な小屋で、夏期に牛を山に放牧し、小屋まで戻し入れ、牛乳を搾る仕事のための住まいとなる。牛から全幅の信頼を得ているブディエは、ノルウェーでは昔から社会的地位が高かったという。

グレーテは、ヘッドマーク県トルガ市のKvannbergetという地区でブディエをしていて、シエテを持っている。

そのシエテに、友人と私は立ち寄った。牛飼いの小屋と、馬草を保存する小屋、住まいとなる小屋が、別々に建てられていた。私たちが到着したとき、牛は山に放牧されていて牛小屋には1頭もいなかった。ブディエのグレーテが、住まい用の小屋に私たちを招きいれ、土地の伝統的お菓子をご馳走してくれた。møske, pjalt, gubb ……。

「女たちに投票せよ」は、シエテの台所の端にあるグレーテと夫のベッド横の壁に掲げられていた。「そろそろ失礼します」と、椅子から立ち上がって、ベッドの方に目を移したら、そこに投票箱する女性が描かれた額があった。

「女たちに投票せよStem på kvinner! 」。私が知っているノルウェー語だった。私は、この運動のリーダーだったベリット・オース(左派社会党初代党首)は、かつて私に「ノルウェー中の女たちが、議会に女性を増やすため党派を超えて団結し、闘った」ことを教えてくれた。候補者のリストの上位に並んでいる男性名を線で消す、「男を消せ!」運動である。この運動は、ノルウェーの政治史を変えたともいえる成果を上げた。

「女たちに投票せよ」チラシに関心を示した私に向かって、グレーテは「このチラシは、フレームをつけて1980年代から、ここに飾っているんですよ」と言った。すると、それまで余り口を開かなかった夫のラーシュが私に向かって「私の母親はフェミニスト運動をした人です。ベリット・オースをよく知ってますよ」と続けた。

チラシをフレームに入れて、ベッドの横に掲げたのは牛飼い・グレーテだろうか、60年代に女性解放運動のリーダーだった母親を持つ夫ラースだろうか・・・。

ノルウェーを変えた女たちのクーデターは、人口1500人ほどの小さな市トルガでも起きていたのである。


■60~80年代の「女たちに投票せよ』運動については
『男を消せ! ノルウェーを変えた女のクーデター』(毎日新聞社)

■グレーテが働くシエテseterについては(伝統料理とミルク絞りなどを体験するアグリツアーを起業)
http://www.simashaugen.no/

■シエテの現状については
http://www.aftenposten.no/english/local/article1994970.ece

■ブディエの現状については
http://www.nrk.no/nyheter/distrikt/ostafjells/telemark/1.6246736

■ベリット・オースについては
http://frihet.exblog.jp/11292292
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by bekokuma321 | 2009-07-20 09:30 | ノルウェー