ノルウェーに伝わる歌を集めて出版した女性

オレア・クラーゲルという女性を知っている人は、ノルウェーでも多くないと思う。19世紀初め、農家に古くから伝わる歌を集めて、出版した女性だ。彼女のおかげで、その昔ノルウェーで歌われていたさまざまな民謡が、今に伝えられることとなった。

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私自身、オレア・クラーゲル Olea Crøgerについて知ったのはごくごく最近だ。しかも、偶然からだ。ノルウェーの観光名所のひとつ、スターヴ教会の見学に行かなかったら、彼女を永久に知ることはなかったかもしれない。

私が行ったのは、スターヴ教会の中で最も大きいといわれているテルマークのヘッダールスターヴ教会(Heddal Stavkirke)だ。オスロからバスで約3時間ぐらいだろうか。途中、寄り道したため正確な所要時間はわからないが、テルマークのヘッダールという地にある。独特な木造建築で知られている。ノルウェーについてのほとんどのガイドブックに写真が載っている。

教会のガイドツアーまで少し時間があった。そこで、私は門の外で時間をつぶしていた。すると、門の前方の木陰の下で、2人の女性が話し合っている銅像が目にはいった。そばに行ってみた。その銅像の横に簡単に書かれたノルウェー語によると、2人のうちの1人は、オレア・クラーゲルという人で、ノルウェー文化に偉大な業績を残した人だとわかった。そばにいた見物客、中には北欧人らしき人も、「この人は誰かしらね」と口々に言っていた。ほとんど知られていないのだろう。

教会見学の後、斜め前にあるレストランにはいった。地下のトイレに行った。トイレの横が小さな博物館となっていた。奥のスペースは、さきほど木陰で見たオレア・クラーゲルについてだった。「彼女の業績は社会に認められていないが、おそらく男性中心主義のためだろう」という解説があった。

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解説によると、オレア・クラーゲルは、テルマークのヘッダールに牧師の娘として、1801年に生まれた。小さな頃から音楽的才能にすぐれていたという。1832年から1855年まで教員をしていたというが、何を教えていたかは不明。歌を歌うことがとても好きで、農民が歌っていた歌を集めて、それを書きとめる仕事に、一生をささげた。

当時、新しく使われ出した楽器サーモディコンpsalmodicon(Salmodikon)との出会いも、プラスしたらしい。10㎝X70㎝ぐらいの横長の楽器で、方々に出かけていって歌を収集するには、もってこいの手軽さだ。解説を読みながら、さらに、彼女の仕事にプラスに作用したのは、父親の遺産を相続できたことではないかと思った。当時の出版事情はわからないが、自分の自由になる財産がなければ、このような「仕事」を続けられなかったと思う。

c0166264_1503871.jpg Jørgen Moe、Magnus Brostrup Landstadという男性2人が、この分野では著名な人らしい。オレア・クラーゲルの出版は、この人たちより以前のことだ、と解説されている。

世界には、文化伝承に貢献した女性たちは数多い。しかし男性文化の影にうずもれ、あえて意識的に発掘し顕彰しないと誰にも知られない。しかし、それにはお金も、根気も、世間の合意もいる。そういう女性たちに光をあてているノルウェーの姿勢に、とても好感が持てる。



▲写真上:オレア・クラーゲル。psalmodiconを膝に抱えている。木陰にスターブ教会が見える
▲写真中:オレア・クラーゲルが使っていたpsalmodicon。レストラン地下の小さな博物館にて
▲写真下:オレア・クラーゲルの履き古した革靴。同博物館にて

■楽器サーモディコンpsalmodicon(Salmodikon) については http://www.norway.org/News/archive/1998/199808psalmodikon.htm
http://www.mnfolkarts.org/musicstring/musicstring.html
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by bekokuma321 | 2009-07-16 01:55 | ノルウェー