マリリン・フレンチ逝去

英紙「テレグラフ」は、フェミニスト運動の先駆者マリリン・フレンチが5月2日に逝去したことを伝えている。その簡潔な記事によって、小説という方法で男性中心主義社会に挑んだ一人の女性の一生が、生き生きとよみがえってきた。要約しよう。

「すべての男は強姦魔。それのみ。男たちは、目で、法律で、記号で女たちを強姦する」

フレンチは、最初の小説『The Women's Room 女たちの部屋』(1977)で、こう、主人公(女)に宣言させる。フレンチは、結婚後に自分を喪失していく多くの女たちを描き、「女たちがさげすまれるのは偶然ではない。女性への侮蔑は、文化の産物ではなく、それこそが文化の中心そのものである。それなしには文化などないのだ」と語っている。

マリリン・フレンチは1929年、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。デパート店員だった母親は、父親が子どもに手を上げることを絶対に許さなかった。それによって「母親は私たちに権威に服従してはならないことを教えてくれた」という。結婚後、法律事務所の仕事をしながら法学部を卒業。何年か後、シモーヌ・ド・ボーボワールの『第2の性』で、本を1冊も書かないのに作家と称する女性たちの章を読んで発奮した彼女は、出版社に自作の原稿を持って行く。しかし、試みは失敗。その後、大学にもどり修士号を修了し、英語の教員となるも、夫は彼女の仕事を邪魔し続けた。1967年離婚。

離婚後、フレンチはハーバード大学に入学し、ジェームズ・ジョイス『ユリシーズ』についての論文を書きあげて出版。このことによって、作家への道を歩むはずみがついた。

『女たちの部屋』は、発行部数2000万部を超え、20カ国語に翻訳出版されている。1950年から70年かけての女たちの生活を、時代を追いながら描く。夫の影から逃れ、期待される女像から脱出していくことで、控えめだった妻が、自分の運命を自分で切り拓こうとする自立心に満ち溢れた人間に変遷していくという女の旅だ。

『力を超えて:女性、男性、道徳について』(1985)では、「男性原理は、戦争、貧困、飢餓、その他、人類を脅かすカタストロフィーの原因である」と言っている。新しい道徳という名で、フレンチは、「家父長主義に対する唯一の、そして真の革命は、パワーという考えを中心からはぎ取り、快楽という考えを中心に置くことである」と提唱する。「その意味では男も犠牲者である。しかし彼らは抗議しようとしない。女を責めるだけだ」

『女性への戦争』(1992)において、フレンチは、「フェミニズムは、女性たちを伝統的な圧政から自由にすることである」とする。ここでいう圧政とは、原理主義的な宗教、家父長制、セクシュアル・ハラスメント、職場の性差別、家庭内暴力、強姦によって女たちが支配されている状態だとする。

1992年、食道癌により余命数か月と診断される。しかし、彼女は強靭な信念で癌に立ち向かう。病との闘いは、『地獄の季節:メモワール』に描写され、出版されている。

ABBAの歌「The Day Before You Came 」に、マリリン・フレンチが登場している。
“I must have read a while, the latest one by Marilyn French or something in that style.”

英紙「テレグラフ」の要約翻訳はここまで。


日本では、『The Women's Room 女たちの部屋』(1977)が、松岡和子訳『背く女』として出版されている。マリリン・フレンチ、今晩、あなたの闘いに、あなたの愛に、キャンドルをともしながら祈りを捧げます・・・。

http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/culture-obituaries/books-obituaries/5273331/Marilyn-French.html
http://feminist.org/news/newsbyte/uswirestory.asp?id=11678
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by bekokuma321 | 2009-05-05 17:15 | USA