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「叫ぶ芸術」第128回は、クロアチアの女性学センターがつくったボーヴォワールのポスター。センター長だったラダ・ボリッチからいただいた。

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第128回「ボーヴォワールを忘れない」を読んで、こんな感想を寄せてくれた人がいた。読者からの感想を読むと本当に励みになる。

「叫ぶ芸術」310日号、良かった、とても良かった。ボーヴォワールは、やっぱりすごい。プラトン、アリストテレス、聖トマス、ルソー、バルザック、オーギュスト・コントと、錚々たるメンバー、世界を動かしたその道のトップの人たち、それらの人々を並べたのが痛快です。ボーヴォワールの大著『第二の性』からそれらを見つけて載せたのは、筆者の三井マリ子さん。さすがです。

次の129回は4月10日。明日が締め切りで、焦っている。頑張らなくっちゃ。連載を載せている『I 女のしんぶん』を購読したいかたは、購読申込 | i女性会議(あいじょせいかいぎ) (joseikaigi.com)から。



# by bekokuma321 | 2024-03-18 17:42 | ヨーロッパ

昨秋、ノルウェー・オスロで、アンネ・リーセ・リーエル弁護士と久しぶりに再会した。


彼女は、現在、全国コロニアル・ガーデン連盟代表。ノルウェー全土に広がる市民農園のまとめ役をしている。1990年末は、ノルウェーの「男女平等オンブッド」だった。


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▲元男女平等オンブッドのリーエル(右)とオスロのコロニアル・ガーデンで(2023/9)


アンネ・リーセ・リーエル弁護士は、日本と縁が深い。初来日1996年。『男尊女尊の国からオンブッドを迎えて』と題した国際シンポジウムで、基調講演をした。大阪、東京、秋田、札幌の4会場はどこも超満員だった。


男女平等オンブッド

再会を祝って、絶版となっている『男女平等オンブッドーー国際シンポジウム「男尊女尊の国からオンブッドを迎えて」報告集』(1997年)を多くの方々に読んでいただこうと、PDFにした。下記をクリックしてどうぞ。


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男女平等オンブッド.pdf


もくじには、①基調講演録 ②パネルディスカッション録 ③ノルウェー資料 ④ノルウェー男女平等法 ⑤アンケート ⑥報道記録 と並ぶ。どのページにも、民主主義度世界一の国の貴重な情報が満載だ。


ノルウェーの「男女平等オンブッド」は、男女平等法(1978年)に定められた公的な独立機関だ。市民からの苦情を無料で受けつけ、女性差別撤廃と男女平等推進に働く。 “北欧民主主義の華”と言われるオンブッド(オンブズマンのこと)は他の北欧諸国にも存在するが、男女平等のためのオンブッドはノルウェーが世界初だった。


男女平等法とクオータ制

ノルウェーの男女平等法は、政治、教育、労働、家族政策など社会のすべての分野を対象とする。明らかな性差別だけでなく間接的性差別も禁止だ。さらに法改正(1988年)をして、公的に選ばれる委員会・審議会などは一方の性が40%を下回ってはならないとするクオータ制(ノルウェー語kvote)を明文化した。


政党は男女平等法の対象外だが、多くの政党は、女性党員の要求に応えて自主的にクオータ制導入に踏み切った。よって90年代には、国会の39%、地方議会の33%まで女性議員が増えた。このクオータ制こそ女性議員増のエンジンだと疑わなかった私は、日本への導入をめざした。しかし、理解してくれる人はごくまれだった。そこで、クオータ制をはじめ男女平等法の規定が順守されるよう監視するヒト、「男女平等オンブッド」、を日本に招く計画をたてた。


男尊女卑(だんそんじょひ)の国から男尊女尊(だんそんじょそん)の国へ

実行委員会をつくって、東京(代表阿部功子)と大阪(代表森屋裕子)に事務局を置き、ノルウェー大使館の協力を得て、開催にこぎつけた。現役「男女平等オンブッド」の話は、具体的で、実にわかりやすかった。「男尊女卑の日本を男尊女尊のノルウェーのように」と夢見る聴衆を魅了した。


日本の法制度と女性の現状

あれから28年。日本では1980年代に、女性差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法の制定、1990年代には、男女共同参画社会基本法、2000年代になると、候補者男女均等法が制定された。しかし、女たちの現実は? 選択的夫婦別姓すら法的に認められず、刑法に堕胎罪がいまだに残存し、非正規職という低賃金不安定労働者の7割は女性だ。日本では、条約も新法も空念仏に終わっているのである。 

 

その背景には、目を覆いたくなるほどの女性議員の少なさがある。たとえば衆議院議員の女性比率は10%だ。地方自治体の「女性ゼロ議会」は200以上もあり、女性議員比率は20%に届かない、男女平等嫌いの日本会議や統一教会の推薦議員たちが国会を席巻していることも影響しているだろう。


地方議会も国会も女性4割以上

一方、ノルウェーは今、閣僚の半分、地方議会・国会の4割以上が女性だ。昨秋の地方選で、全市長の4割近くが女性となった。さらに男女平等オンブッドは、法改正にともなって「平等・反差別オンブッド」に変わった。それによって、性による差別だけでなく、人種、国籍、障害、言語、宗教・信条、年齢などによる差別が禁止の対象となった。


選挙制度

最後に、選挙制度の重要性を強調したい。ノルウェーの女性議員増に貢献したのは、間違いなくクオータ制である。そのクオータ制が威力を発揮できたのは、ノルウェーが比例代表制という選挙制度だったからである。政党は候補者を決めるとき、比例名簿を男女交互順にしたりする。日本のような小選挙区中心では、こんな男女交互順などできないだろう。1996年の国際シンポで、選挙制度に踏みこめなかったのは、ひとえに実行委員会委員長だった私の未熟さによる。当時の私は、比例代表制の重要さに十分気がついていなかった。



「クオータ制発祥の国ノルウェー」(pdf)

「クオータ制」「男女平等オンブッド」を日本にも:ノルウェー王国功労章受章式を見て(by 高橋三栄子) : FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェー「平等と反差別オンブッド」と政治文化フェス: FEM-NEWS (exblog.jp)

井上輝子さんの訃報とクオータ制: FEM-NEWS (exblog.jp)

女性議員増には比例代表制とクオータ制(IPU) : FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェー最大政党のクオータ制条項 : FEM-NEWS (exblog.jp)

男女平等オンブッドから考えるセクハラ: FEM-NEWS (exblog.jp)

映画界の女性差別をなくすために: FEM-NEWS (exblog.jp)

ヨーロッパを動かしたノルウェー「取締役クオータ」: FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェーの新「平等と反差別オンブッド」決まる: FEM-NEWS (exblog.jp)




【写真はBente Skjerven撮影】


# by bekokuma321 | 2024-03-15 10:46 | ノルウェー

国際女性ーにあわせて、ノルウェー国会は、政党代表10人がオール女性のポートレートを国会ホームページに載せて、その活躍をたたえた。


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▲国際女性デーを記念してノルウェー国会は「歴史的写真」と全員女性の政党代表をたたえた

前列は緑の党、左派社会党、労働党、中央党、、赤党。後列はキリスト教民主党、進歩党、保守党、自由党、患者ファースト党。いずれも左から。


現政権を主導する労働党の代表は、「歴史的です」としながらも、国際女性デーという日に、「政治の場における女性の地位を獲得し、要求し、さらに、その後に続く私たちに道を譲ってくれた、勤勉なすべての女性たちを思いすおこすこと」が大切だと述べた。


ノルウェーは、政界における男女平等で、常に世界のトップランナーだ。


1970年代には、クオータ制を党内の決定機関や候補者リストに実行する政党が現れた。

1980年代には、公的機関への女性比率を40%以上にするよう男女平等法が改正された。

1986年、初の女性首相となったグロ・ハーレム・ブルントラントが、「女性40%内閣」を組閣。その後、今日まで、政権交代はあっても女性閣僚が40%以下に後退することはなかった。

2021年の総選挙で、国会議員の女性比率は46%を超えた。


2023年10月18日、ついにノルウェー国会の政党代表全員が女性となった。その時の国会ホームページには「ベリット・オースが女性初の民主社会党・国会代表となって50年、今回、すべての党の代表が女性となった」と記されていた。



Historicalpicture: Here are all the parliamentary leaders in Parliament - stortinget.no (写真も)

https://www.facebook.com/stortinget



# by bekokuma321 | 2024-03-09 14:37 | ノルウェー

今日、38日は国際女性デー

世界中で、女であることを、ともに喜び

女を抑圧するすべてのことに、ともに怒る日


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▲八ヶ岳麓から「祝!国際女性デー 平等なくして平和なし」(2024.3.8 1620)


国際女性デ―の歴史は、女性の闘う歴史だ。


1910年、コペンハーゲンで第2回働く女性の国際会議が開かれた。17カ国から100人の女たちが集まった。そこでドイツ社会民主党女性局代表クララ・ゼトキンが、「世界の女たちよ、同じ日にいっせいに女性の権利を要求しよう」と、女性デーを提案。


1911年、319日、世界で初めて国際女性デーが、オーストリア、デンマーク、ドイツ、スイスで行われた。女性の労働権、女性参政権、政治参加、性差別撤廃を求めて100万人以上が集まった。この1週間後、325日、ニューヨークで火災が発生。140人の働く女性が犠牲に。この事件をきっかけに女性労働者の働く環境の改善が大きなテーマとなった。


19172月末のロシア。100万人を超す犠牲者を出した戦争に反対して、女性たちがストを決行。官憲に阻止されつつも、ストは続いた。4日後、皇帝の退位、女性参政権の認可につながった。スト終結の228日(当時のロシア暦で)は、グレゴリー歴にすると38日にあたった。


1975年、世界中の国際女性デーのイベントに連帯して、国連も会議を開くようになり、国連主催の国際女性デーがスタート。世界中で、38日、女性団体や政府によって大イベントが開催され、女性の権利獲得を祝い、女性の未来を話し合う日として定着していった。民間の、しかも社会主義国から始った女たちのイニシアティブが、国連や西側政府をも動かすことになった。


1980年代、アイスランドでは、女性党の力によって女性大統領が誕生した。女性大統領は、38日の女性デーになると、女性たちに連帯して執務をやめた、という。ノルウェーでは、毎年、この日に新しい女性政策が披露される。中国、アルメニア、ロシア、マケドニアなどでは、この日は国民の休日。働く女たちに感謝する日となっている。


そして、わが日本。


ウーマンリブの女たちは、70年代頃から、ささやかながら力強く国際女性デーに参加してきた。社会主義カラーを嫌ってか、日本政府は、「国際女性デー」に長年冷たかったが、国連や西側政府に同調するかのように、イベントを催すようになった。以下、日本の国際女性デーをアトランダムに。


2010年、国際女性デ―100年を記念して女性運動家の麻鳥澄江さんがパレードを企画準備。

小雨の渋谷を「セクハラやめろ、暴力やめろ・・・」と練り歩いた。


2012年、四国は徳島「3.8国際女性デ―徳島県集会」にて、

3.11以来、非常時なのだからと女性の人権を後回しにされてきた」

「避難所で、仮設住宅で、女たちの声をないがしろにするな」


2015年、女たちが渋谷ハチ公前に集まって

女性議員を増やそう!とフラッシュ・モブのパフォーマンスをした。


2017年、「ウィメンズマーチ東京」、ジェンダーに基づく差別や暴力に反対する

国際女性デー・マーチを企画


女たちの働く環境や暮らす環境は憤激ものだが

わたしは闘う気概を捨ててはいない、あなたとともに。

おめでとう! 国際女性デ―!



速報:2023年国際女性デー@東京 : FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェー平等大臣の3/8演説「平等は黙っていてもやってこない、私たちは闘わなければ」 : FEM-NEWS(exblog.jp)

報告:国際女性デー記念シンポジウム「性購買という搾取と暴力」by中里見博 : FEM-NEWS (exblog.jp)

おめでとう!国際女性デー(2023.3.8) : FEM-NEWS (exblog.jp)

祝!3/8ウィメンズマーチ 集まろう、歩こう、つながろう!: FEM-NEWS (exblog.jp)

叫ぶ芸術「国際女性デーの栄枯盛衰:ノルウェー」: FEM-NEWS (exblog.jp)

2022国際女性デーは「反プーチン、反家父長制、反戦」 : FEM-NEWS (exblog.jp)

もうじき2022.3.8国際女性デー : FEM-NEWS (exblog.jp)

ウィメンズマーチ東京2021: FEM-NEWS (exblog.jp)

国際女性デーFEM-NEWSの3年間 : FEM-NEWS (exblog.jp)


# by bekokuma321 | 2024-03-08 18:43 | 日本

フランスで、34日、上院・下院の両院議会において、人工妊娠中絶権を憲法に明記する議案が可決された。パリ郊外にあるヴェルサイユ宮殿で。


パリから流れてきたユーチューブを見た。


エッフェル塔を眺められるパリ中央のトロカデロ広場。そこは、大勢の市民であふれかえっている。広場には巨大スクリーンが設置されているではないか。憲法による人口妊娠中絶権を決める瞬間が、市民たちの前に生中継されるのだ。何という素晴らしい仕掛けだろう。


フランス、憲法を改正して妊娠中絶の権利を保障へ_c0166264_00105706.png

パリ中央のトロカデロ広場にある巨大スクリーンに国会中継が。France becomes first countryto enshrine abortion rights in constitution (youtube.com)



国会議長ヤエル・ブロン=ピヴェは、マクロン大統領派の「ルネッサンス党」議員。初の女性国会議長だ。議長席から「賛成780、反対72」の大差で憲法改正が決まったことを告げる。すると、同時に、国会の議席、傍聴席、そしてトロカデロ広場から、いっせいに大歓声があがる。


大勢の市民たちが集う広場から見るエッフェル塔には、照明が・・・。そして「私のからだ、私の選択 Mon corps, mon choix」という文字が浮かび上がる。


議場で、急進左派「不服従のフランス」のマルド・パ議員は、右手に力をこめて壇上から訴えるーー「これは、私たちの勝利であり、世界の女性たちの勝利です。この歴史的決定は、アルゼンチン、アメリカ、アンドラ、イタリア、ハンガリー、ポーランドなどで中絶権を求めて闘っている女たちの勝利なのです・・・」。世界との連帯を掲げる彼女の熱弁は、大喝采を浴びる。


フランスは、人工妊娠中絶を法律で合法化している国だ。それがなぜ、いま憲法に? 報道によると、アメリカ連邦最高裁が妊娠中絶合法化を覆したことに刺激されたのだという。


思い出すのは、40年ほど前、1983年のアメリカ。「選択の自由」「女の身体は女が決める」ーーニューヨークのブロードウェイに女たちの声が響いた。当時、ニューヨークのコロンビア大学に留学していた私もデモに加わった。女性の人工妊娠中絶権を認めた、「ロー対ウェイド判決」の10周年記念イベントだった。「個人的なことは政治的なこと」に私は大きく動かされた。アメリカは1973年に妊娠中絶は合法であると最高裁が判断した国であること、妊娠中絶合法化反対のレーガン大統領(当時)の匙加減でそれが覆されるおそれがあること、を私は学んだ。


2017年、トランプがアメリカ大統領に就任した。彼の人事によって、米連邦最高裁は保守派が過半数となった。その結果、2022年、最高裁は、人工妊娠中絶を憲法上の権利とした「ロー対ウェイド判決」を破棄した。


アメリカのようにしてはならない。


フランスは、妊娠中絶は人権であると、憲法に明記する選択をした。世界初だという。ひるがえってわが日本。女性の声が政治に届いていない。なにしろ、妊娠中絶を「堕胎罪」とする刑法がいまだに存続している。



FranceEnshrines Abortion Rights in Its Constitution - The New York Times(nytimes.com)

France becomes the firstcountry in the world to protect abortion rights in its constitution - BBC NewsWorld

France, first to protect abortion in Constitution, sends message to 'women of the world' (lemonde.fr)

残酷かつ悲劇的な米国の最高裁判決:保守派判事増えて妊娠中絶権破棄される : FEM-NEWS (exblog.jp)

第112回 からだは自由だ!(フランス)(ionnanoshinbun.blogspot.com)

第71回  今あらためて「妊娠中絶権は人権」(フランス)(ionnanoshinbun.blogspot.com)



# by bekokuma321 | 2024-03-06 00:41 | ヨーロッパ